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第一章 告白③

(どうしよう……! どうしよう……!)  マティアスは自室の机で手を組み、ひたすら考えていた。  何もしなければ数時間後にウィルバートは殺されてしまう。なんとしてでも助けなければならない。  部屋の中には二人の兵士が立たされマティアスを見張っていた。この前使った脱出路は塞がれている。だが、なんとしてでもこの部屋から抜け出しウィルバートを助けに行きたい。  地下牢はどんな警護体制になっているかもわからないが、もはや迷っている時間は無い。  マティアスは決意した。 「なあ、お前達は何があったか聞かされているのか」  平静を装って兵士二人に聞いてみる。 「いえ、我々は何も……」  突然話しかけられて二人とも戸惑っている様子だが、兵士から緊張感が漂ってこない。本当に何も知らないのだろう。そもそもイーヴァリがマティアスとウィルバートの関係を末端の兵士まで伝えろとは言うはずがない。 「はぁ! もう呑まないとやってられない! なあ、酒を持ってきてくれよ。りんごの発泡酒が飲みたい」  マティアスは兵士の一人に言った。 「ですが我々は……」 「今回の件は陛下にちょっと逆らっただけなんだ。見張りなんて一人居ればいいだろう。どうせ廊下にも居るんだし?」  兵士二人は戸惑っているようだかやがて「すぐに持って参ります」と言って一人が出て行った。 廊下に見張りがいることも否定しなかったからいつも通り二人の衛兵が居るはずだ。 「あーあ、本当にくだらないんだ」  マティアスは残された兵士に近づきながら話しかけた。 「陛下はさ、私にすぐに妃を娶れっていってるんだ」 「左様でごさいますか……」  兵士が気を使いながら相槌を打ってくる。 「でも私は、あまり女に興味が湧かなくて……」  そう言って、マティアスより少しばかり背が高いその兵士を上目使いで見つめた。兵士が大きく目を見開く。 「ねぇ、男、抱いたことある?」  兵士を見つめ、その甲冑を纏った胸に手を置きながら聞いた。兵士の顔がブワッと赤くなる。 「あっ……えっと、そ、そうですね……娼館で少年を買ったことは、あ、あります……」  『娼館』と言う言葉に胸が微かに痛んだ。 (まったく、どいつもこいつも……)  しかし今はそれを気にしている場合では無い。 「少年か……。もう成人した私では駄目かな?」  小首をかしげて聞いてみる。兵士は真っ赤な顔を横に振りながら言った。 「ま、まさか! 殿下は私が知るどんな人より美しいです……」 「そう……。嬉しいよ」  マティアスはそう言ってその兵士に抱き着いた。

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