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第一章 告白④

「ま、マティアス様っ!」  兵士もまたマティアスを抱き締めてきた。そしてフガフガと鼻を鳴らしながらマティアスの首筋に顔を埋め、背中を撫で回しながら尻にまで手を伸ばしてきた。  マティアスはゾッとする感覚に耐えた。 「ああっ、なんていい匂いっ……!」  兵士は明らかに興奮し始め、マティアスの尻の谷間をなぞり探り始める。  マティアスは小さく「……ごめん」と呟き、兵士の股間を思いっきり蹴り上げた。 「ゔっ!!」  兵士は崩れ落ちそのまま泡を吹いて気絶した。マティアスは本当に申し訳ないと思いつつも、もはや他者を気遣う余裕が無かった。  第一段階の作戦に成功したマティアスは急ぎ窓辺に駆け寄り窓を開けた。  ここは三階だ。壁伝いに降りられるだろうか。 ――そんな所、登っちゃいけないんじゃないか? 危ないから降りてこいよ。  ふと、頭の中にウィルバートと出会った時のことが蘇った。  あの時は二階からの脱出だった。今回は三階。大した差じゃないように思えてくるし、なんだか落ちてもウィルバートがまた受け止めてくれるような気がした。  溢れ出そうになる涙を堪え、窓をから身を乗り出した時、 「マティアス殿下!」  扉が開き、アーロンが入ってきた。  室内で伸びている兵士をチラリと見て、マティアスに拍手する。 「流石でごさいます。殿下。しかしそこまでです」 「アーロン……」 「それで、その窓から無事に地上へ降りたとして、地下牢からどうやってお姫様を助けるおつもりで?」  アーロンがやや呆れながら言っている。  しかしマティアスはアーロンをまっすぐ見つめて言った。 「アーロン、ここを抜けた後、どこかでお前を捕まえられればと思っていたが好都合だ」  アーロンはマティアスの話を聞きながら眉を寄せた。 「アーロン、頼む。私とウィルを逃がしてくれ」  マティアスの言葉にアーロンは驚きの表情を浮かべ、また険しい表情に戻った。 「二人で逃げて何処へ行くと言うのです?」 「何処だっていい」 「王子の貴方が外で生きていけると?」 「ウィルがいない世界なら、私はどこだって生きることは出来ない」 「殿下……」  アーロンはフゥーッと長い溜め息を付いた。

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