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第一章 告白⑤
「アーロン、お前だってウィルが処刑されて良いとは思ってないだろう?!」
マティアスの言葉にアーロンは険しい表情を浮かべた。
「……マティアス殿下。ウィルバートはそれを覚悟してここへ戻ったのです……」
「駄目だ! 私には覚悟なんて出来ない!」
マティアスは悲鳴に近い怒鳴り声を上げた。耐えていた涙が膨れ上がり零れそうになる。
アーロンはしばらく沈黙した。ほんの数秒だ。そして、倒れている兵士の甲冑を脱がしにかかった。
「これを着けてください」
そう言ってマティアスの足元に兜や甲冑を転がしてきた。
「アーロン……!」
マティアスは急いでそれを拾い身に着けた。
アーロンはそれを手伝いながら、マティアスに聞いてきた。
「一体、どうやってこの兵士を?」
「い、色仕掛け……?」
マティアスの答えにアーロンが「はぁ?」と素っ頓狂な声を上げた。
「自分が男に通用するかはわからなかったけど、前にアーロンが私の事を『愛してないが抱こうと思えば抱ける』って言っていたから、いけるかなって……」
アーロンは呆れたように呟いた。
「ウィルバートが処刑される前に、私があいつに殺されそうだ……」
甲冑を着てアーロンの部下のフリをしマティアスは城内を急ぎ進んだ。
気絶した兵士はマティアスの寝台に寝かせ、マティアスが就寝したように偽装したが、そのうち兵士の意識は戻るだろう。発覚するのも時間の問題だ。
アーロンに連れられて来た地下牢はマティアスが初めて来た場所だった。
洞窟に作られたその牢は壁から染み出した地下水で濡れ、ジメッとした陰気な空気を漂わせている。
「ご苦労。休憩に入っていいぞ。こいつと交代だ」
「クランツ隊長!」
アーロンは見張りをしていた兵士二人にそう言い、言われた兵士達は突然の隊長の登場に驚きつつも、疑うこと無く持ち場を譲り去って行った。
「我が国の警備体制には改善の余地ありだな……」
アーロンはそう呟きながらマティアスを地下牢へと案内した。地下通路には沢山の牢が並んでいたがどれも空だ。この国が今平和なことを表している。
少し奧まった一つに松明が灯されていた。
「ウィル……っ!」
マティアスはその牢に駆け寄り、兜を抜いだ。
投げ落とした兜の金属音が洞窟に響き渡る。
「マティアス様っ、なぜ……!」
ウィルバートが鉄格子を掴み驚きの表情でこちらを見ている。マティアスはその手に自身の手を重ねた。
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