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第一章 祖父と孫②

「王に会いに行く。そこを通せ」  ベレフォードの弟子たちにそう言うと彼らは心底怯た様子で言ってきた。 「ま、マティアス殿下、どうか、どうかお戻りくださいっ!」  マティアスは冷静に、しかし冷淡に言った。 「駄目だ。私は王に会わなければならない」  そう強く言った瞬間、バササササッと光の妖精達が大量にマティアスの周りに集まって来た。 妖精の光りに包まれ目の前が金色一色になる。 「マティアス殿下っ!」  弟子たちが叫んでいるが聴こえなるなり、ほんの数秒で今度は妖精達がマティアスから離れて行った。  (ひら)けた視界に写ったのは別の空間だった。そこはマティアスの寝室とよく似た部屋。 「で、殿下っ!」  声がした方を見ると驚いた表情のベレフォードがいた。 「あの、あの結界を破ったのですか!?」  ベレフォードの問いを無視して寝台を見た。そこにはイーヴァリが横たわっていた。ここはイーヴァリの寝室だ。光の妖精達はマティアスの要望を叶えてくれたらしい。 「マティアス……その髪はどうした」  寝台の上からイーヴァリが声をかけてきた。すると杖を構えたベレフォードが二人の間に立ち塞がり、マティアスからイーヴァリを守ろうと鋭い視線を投げてくる。 「ベレフォード、良い。下がりなさい」 「陛下っ! しかし……」 「良い。マティアスと話したい」  イーヴァリの言葉にベレフォードは杖は構えたまま部屋の脇へと下がった。そしてイーヴァリがゆっくりと身を起こした。その姿にマティアスは息をのんだ。  イーヴァリは右肩から腕が無くなっていた。  ガウンを羽織っているが明らかに肩の位置から欠損している。ベレフォードにより治癒魔法が施されたのだろうが、イーヴァリは青ざめ起き上がるのがやっとという感じだ。 「その腕……私が、私がやったのですか……」  声を震わせながらマティアスは尋ねた。  イーヴァリはマティアスをまっすぐに見て言った。 「これは、孫にばかり背負わせた私への罰だ」 「はは……そうですね……」  マティアスは乾いた笑いを漏らした。

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