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第二章 転機③

「すごい! すごい! すごい!」  ロッタとミルヴァが帰った後、ニーナは興奮を抑えられない様子だった。 「いいなぁ、私も王子様に会ってみたい!」 「ニーナ、国王様だよ」  ヨエルが笑いながら訂正する。 「ああ、そうだった。でも王様って言うより王子様って感じの方よね。二人は肖像画見たことある?」  ニーナの問いに二人は頷いた。  アルヴァンデール王国には広場や教会はもちろん、酒場や個人宅など、いたるところにの王族の肖像画が飾られている。一番多いのは先の『黒霧の厄災』を鎮めた英雄、クラウス王子とセラフィーナ王女。そして大抵その横にマティアス国王の肖像画も飾られている。 「でもさぁ、肖像画って三割増で美男美女に描くだろ?」  カイがそう言うとニーナは前のめりで言葉を被せてきた。 「それがね、街の人は皆『本物の方が美しい』って言うのよ!」 「いやいやいや」  カイとヨエルの声が重なる。  そんな事あるわけないとカイは思った。事実なら肖像画を描いた画家がヘタクソなだけだ。ヨエルも同じように思ったようで話を付け足す。 「肖像画より美しいなんて、流石にそれは無いだろ。でもまあアルヴァンデールの人にとってはそれくらい自慢の王様ってことだな」 「まあ、かなり変わってるとも聞いたけどね。お妃様を娶らないと言うのもだけど、過去に何回か突然髪を切っちゃった事もあるらしいわよ。マティアス陛下は王子の時から美しくて長い金髪が特に人気だったらしいんだけど、去年、戴冠式の目前にもバッサリ切っちゃったらしくて、国民は皆ガッカリしたって言ってたわ」  ニーナの情報なヨエルとカイは息を飲んだ。 「か、感情的なんだろうか……」  ヨエルが呟く。 「なんか、不安になってきたな……」  カイもそう思い呟いた。  王様を怒らせたらどうなるのたろうか。 「で、でも! 感情で民を裁くような悪名は聞かないから、余程でなければ大丈夫よ。……たぶん」  ニーナが顔を引き攣らせている。  ヨエルはカイに顔を向けて強く言ってきた。 「よし、慎重にいこうな! 発言には十分気をつけよう!」

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