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第二章 知らない男⑧*
しかし一度の射精では怒りが混じったカイの興奮は収まらなかった。放った精液をマティアスの内壁に塗り込むようにさらに腰を動かす。
「んっ!」
時折マティアスから堪えきれない吐息が漏れた。
ソファにうつ伏せになり袖を噛みながら必死に耐えるマティアスの背中にカイは覆いかぶさり、乱れた金髪に鼻先を埋め匂いを嗅ぐ。鼻腔から肺を満たすマティアスの香りにカイはさらに興奮した。
昂る想いを抑えられずカイはより激しく腰を振り、マティアスの蕾を深く深く蹂躙し続けた。
「んっ、んぁ! はぁんっ!」
刺激に耐えきれずマティアスの口から喘ぎ声が漏れる。夢よりも少し低い大人の男の声。だがそれはより艶めかしく聴こえカイを煽った。
どれほどの時間が過ぎたかカイには分からなくなっていた。
カイはマティアスの腹の中に何度も何度も欲望の種を吐き出した。何度目かの射精でかなり頭が冷えてきたカイは、やっとその蕾から自身のソレを引き抜いた。
ゴプッと音を立てて蕾から溢れ出てきたのは、白と赤。
「っ……!」
カイは慌てた。
己を見失い力任せに犯した結果、その繊細な蕾を引き裂いてしまった。
「ま、マティアス様っ!」
うつ伏せのまま動かないマティアスを抱き起こすとマティアスは青ざめた顔で意識を失っていた。
「マティアス様! マティアス様!」
血の気のない頰を軽く叩き揺さぶると、長い睫毛が震え緑の瞳にカイが映った。
「……ィル……」
微かに呼ばれる自分の名ではない名。悲しみと申し訳無さが混在しカイの目から涙が溢れた。
「も、申し訳ありませんっ……こ、こんな……」
「何を泣いている?」
カイに抱きかかえられたマティアスがカイの涙を拭うように頰を手の甲で撫でてきた。
「しゅ、出血されています……っ」
カイの言葉にマティアスは自身の下腹部に視線をやった。するとフワリと笑いカイの肩に頭を預けながらカイを見つめた。
「いっぱい出たな……」
マティアスは自身の血ではなく、カイが放った精液を見ている。
恋人にするような甘い囁き。
こんなに酷いやり方をされてもマティアスは幸せそうに微笑んでいる。
それは過去の騎士を愛し続けているからだ。
カイに向けられたものでは無い。
カイは胸の苦しさを必死に押し込めた。
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