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第二章 誕生日と輝飛竜①

 十月二日。  アルヴァンデール王国国王マティアス・ユセラン・アルヴァンデールが二十六歳の誕生日を迎え、城では誕生日祝賀会が開かれた。  昼過ぎから行われるその祝賀会に、テーラー・アールグレーンの三人は新調した衣装を身に纏い城へと入った。  正直三人とも寝不足だった。  何故なら、この衣装を一週間で仕上げたからだ。  ロッタから招待状を貰ったその日、行くべきか迷うカイと、格好の営業チャンスが舞い込み浮かれるヨエルにニーナが言った。「私たち、何着てくの?」と。  カイは「フォルシュランドから持ってきたもので良いのではないか?」と言ったが、ヨエルは「それは形が古いと言われたものだ。陛下の衣装が素晴らしくても、我々が着ているものがイマイチならまぐれだと思われる!」と主張した。ニーナは「私、そもそもパーティードレスなんて持ってない!」と二人に訴えた。  と言うことで、テーラー・アールグレーンの威信をかけて三着の衣装を七日間で作らねばならなくなった。しかもヨエルとカイは紳士服専門であり婦人向けのドレスは専門外だ。  苦肉の策としてカイは三人の衣装をお揃いにした。三種の図案を考える余裕が無かったのと、専門外のドレスを紳士服に寄せることで誤魔化す狙いもあった。  そして昨日完成したばかりの衣装を着て三人は城に立っていた。 「やぁ~、どうなるかと思ったけど、間に合って良かったよね」  ヨエルは寝不足を感じさせない満面の笑みだった。  祝賀会が開かれる大広間へ続く回廊を、ドレスアップした貴族に混じりながら進む。 「私、クマみえてる? 昨日は寝る時間取れたけど、この一週間殆ど寝てなかったし……」 「大丈夫だ。ちゃんと化粧で隠せてる」  ニーナの不安に淡々とカイが答えた。  三人揃いの衣装は苦肉の策ではあったが目立っていた。  色は茶をメインに襟などに深紅を差し秋らしい配色にした。フロックコートは三人ともほぼ同じ形で、後ろに大きくスリットを入れ、ニーナの膨らんだスカート部分にも違和感なく合う形に。生地もパーツも全て地下の在庫品を使用したが、余り物で作ったとは誰も思わないだろう。  三人ともパートナーを連れずに来た訳だが、三人で揃いの衣装にしたことで『テーラーとして来た』と言う意味合いが強くなり宣伝効果も大きく期待できる。  まだマティアスの衣装のことを全く知らない招待客達からのも、その視線で三人の衣装は好感触だとわかりヨエルはさらに上機嫌だった。

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