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第二章 誕生日と輝飛竜④

 輝飛竜は大広間と庭の境目に作られた広いバルコニーにいた。輝飛竜から少し離れた場所でマティアスはサムエルと談笑している。  輝飛竜を一目見ようと多くの参列者がバルコニーに集まり、入りきれない者は庭へ出て、また大広間の窓からも沢山の人々がその様子を覗いていた。  カイ達三人は大広間の入口付近でその様子を見物する事にした。  ふとカイはすぐに近くに赤毛のルーカスが居ることに気付いた。  どうしようかと迷いつつ声をかける。 「ルーカス様。ごきげんよう」 「あ、貴方は……どうも……」  先日のカイがマティアスにした事を考えると、その腰に備えたサーベルで突き刺されてもおかしくは無い。だがルーカスは適当に挨拶をするとそのまま黙り庭を見つめ続けている。その表情はどこか不安げで何かを恐れているようでもあった。 (輝飛竜が怖いのか……?)  確かにあの大きさの飛竜は大人でも恐怖を感じる。大人しく賢いとはいえ、一度襲われたら小さな人間などひとたまりもない。  そんなルーカスの背後からカイ達は輝飛竜とマティアス達を見つめた。  マティアスはサムエルや他の従者と共に輝飛竜に近づいた。ルーカスとは違い落ち着いている。普段から輝飛竜と接しているのかもしれない。  ところが、  輝飛竜のすぐ近くまで歩み出たマティアスに対して輝飛竜が鋭く威嚇するかのように『ギエエェェッ!』と雄叫びを上げた。 「なんだ? 演出か?」  ヨエルが呟く。  ふとすぐ前にいるルーカスが目に入った。ルーカスは両手を握りしめ祈るように目を固く閉じている。 (まさか……!)  カイは強い胸騒ぎを感じた。  その瞬間、「わあぁぁ!」と言う人々の叫び声と共に、輝飛竜が激しく暴れ、鎖を持った従者達が軽々と吹き飛ばされていった。  輝飛竜はそのまま鋭い爪の付いた脚でマティアスに襲いかかった。 「……まずいっ!」  カイはとっさにルーカスが腰に差していたサーベルを引き抜きマティアスの元に全速力で走った。 「カイっ!」  背後からヨエルが叫ぶ声がする。  視線の先でマティアスを庇ったオレンジ髪の兵士アーロンが輝飛竜に蹴られ軽々と飛んでいく。  カイは人垣をなぎ倒す勢いで突き進むが一歩遅くマティアスは輝飛竜に押し倒され踏みつけられた。 「マティアス様ぁぁ!」  カイはサーベルを振りかざしマティアスの名を叫んだ。バルコニーの石畳に輝飛竜の脚で縫い止められたマティアスがカイに気付き目があった。 「来るなっ!」  マティアスがそう叫んだ瞬間、輝飛竜が脚に力を込め、マティアスの肩に鋭い爪が喰い込んだ。 「ぐっ……ぁ……!」  マティアスが呻くと肩から鮮血が溢れ出した。

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