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第三章 泉にて⑤*

「あんまり浸かってると冷える。洗えばいいのか?」  カイははぐらかすようにそう聞くと、マティアスの答えを待たずにその背中を撫で回した。 「ちょっ! 待ってっ、く、くすぐったいっ!」 「暴れるなよ。傷に響く」 「そ、そんなこと言ったってッ! ひゃぁ! わ、脇はダメッ!」  くすぐられて笑い転げる子供のようにマティアスはカイの腕の中で身を捩る。仰け反ったマティアスの右胸が目に入った。負傷している左側とは対照的に白い肌に映える瑞々しい赤い飾り。そして手のひらに感じる滑らかな肌の感触。  カイはグワッと下半身に血が集まるのを感じた。 (まずい……)  流石にこの密着した状態で勃起してしまったらすぐにバレる。 「さ、もう上がれ」  カイはそう言ってマティアスを泉の淵に促した。 「ああ、そうするよ」  マティアスは笑い疲れたようでヘロヘロと先程まで座っていた平たい石にすがりついた。  片手で必死に上がろうとしているので、カイが水中からマティアスの脚を押し上げてやった。しかしそれがとどめとなった。マティアスの白い尻とさらにその奥の秘めたる場所が目の前晒された。 「んっ、あっ、ありがとっ」  なんとか泉から出たマティアスは石に全裸で寝転ぶ形になりながら体勢を整えている。さしずめ浜に打ち上げられた人魚のようだ。 (……なんでこんなに無防備なんだよっ!) 「ちゃ、ちゃんと拭いて、荷車、陽が当たってるから乗って身体を温めてろ。俺も身体洗ったらすぐ上がるから」  カイはそう早口で指示をした。マティアスは「わかった」と素直に頷き、身体を拭き始めた。  マティアスが身体を拭き再び寝巻きを着て荷車に行ったのを確認し、カイは泉を泳ぎ少し離れた所へ移動した。  冷たい水の中にもかかわらず股間のそれは硬く天を仰いでいる。急ぎ処理しなければと思いそれを握り扱いた。  先程のマティアスを思い浮かべる。  尻の谷間から見えた薄紅色の蕾。先日引き裂いてしまったそこは綺麗に治り慎ましやかに閉じていた。  今度する時はゆっくり時間をかけて解し、トロトロに溶かして気持ちよくさせてやりたい、等と思いながら手を動かす。次があるかなんて分からないのだが……。 「……くっ!」  マティアスとの蜜月を妄想しカイは水の中で欲望を吐き出した。

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