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第三章 欠片③

「ひょっとして、これを入れたのが誰なのか心当たりがあるのか?」  恐る恐る聞いてみるとマティアスは困ったような悲しそうな顔をする。その憎しみの無い表情にカイはピンと来た。 「……ルーカスか?」  カイの問いかけにマティアスは驚いたようにカイを見た。 「なぜそう思う?」 「あの時、輝飛竜が暴れる前からルーカスは何か怯えるような、祈るような感じだったから、違和感があった。これから何が起こるか知ってたんだと思う」  カイの答えにマティアスはショックを隠せないようでカイから目をそらし俯いた。 「最近ルーカスとは上手くってなかったから、もしかしてと……。でも、輝飛竜には警備兵が何人もついてるしルーカスが卵に近づくのは無理だと思う。ルーカスではないかも……」  マティアスとしては側近に裏切られたとは思いたくないのだろう。だがあの様子は明らかに怪しかった。 「主犯格は他にいる可能性もあるんじゃないか? ルーカスは誰かの指示で卵の欠片を服に入れただけとか……」  カイの発言にマティアスはハッと顔を上げた。 「だ、だとしたら、ルーカスに指示した奴は事情を知っているあの子に危害を加えようとしないだろうか!? く、口封じに殺したり、罪を全部着せてしょ、処刑しようとしたり……!」  それまで冷静に話していたマティアスが突然声を荒げてカイに詰め寄ってきた。カイはそんなマティアスに腹が立った。 「だとしてもルーカスは犯人の一人だろ?! 心配してやる必要なんてない! こっちは生きてるのが奇跡なんだ!」  カイは声を荒げてマティアスを責めた。マティアスは本当にあと少しで死んでいたのだ。つい二晩前の真っ白に血の気が引いたマティアスの姿が頭をよぎる。それを思うとカイはルーカスのことなどどうでもいいと思ったし、とても許す気になれない。 「そ、そうだけどっ! でも彼女には酷い目にあって欲しくないんだっ!」  カイに責め立てられたマティアスが興奮気味に反論してくる。その言葉の中に紛れる違和感。 「は? 彼女って……?」  その言葉の引っ掛かりを拾い。カイはマティアスに尋ねた。するとマティアスは一瞬だが明らかに『しまった!』と言う顔をしたが、すぐに口を開いた。 「……あの子は、ルーカスじゃないんだ。ルーカスの姉のマリアンナなんだ」

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