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第三章 薪集め②

「すまんすまん。あんな美人、こんな田舎じゃあお目にかかれないから、俺もお近付きになりたいなぁって思ってたけどさぁ、まあ、ちょっかい出すのはやめるよ」 「ああ。そうしてくれると助かる。レオンは警戒心が薄いんだ。『二十六歳の男を襲う奴なんて居ない』って本気で言ってる」 「えっ! レオンって二十六なの?!」  ダンが予想外の所で驚き声を上げた。 「まあ、今は特に人に頼るしかない状況だから余計に子供ぽく見えるかもな」  アルヴァンデールでのマティアスは年齢以上に落ち着いた雰囲気で、王としての威厳を放っている場面も多かったのだが。 「あれで二十六かぁ……エッロ……」  その呟きにカイは近くにあった小枝を拾うとダンに投げつけた。  ダンに手伝ってもらい、その一日で薪集めは格段に進んだ。  裏庭に集めた大量の木材。  三日に一度はマティアスに湯浴みをさせてやりたいと思い、かなり多く集めた。 「あとは割って薪棚に入れてく作業だな」  その木材の山を見ながらダンが言った。 「暇見てちょくちょくやるよ」 「まあ、雪が積もる前に大方片付けるべきだな。雪に埋まると大変だし、吹雪の中で薪割りはしたくないだろ?」 「確かに……。じゃあ、あまりのんびりもしてられないな」 「そそ。田舎は雪降るまで必死に働いて、雪降ったら家に閉じ籠もるんだよ。だから春には若奥さん達は皆孕んでる」  突然挟まれる下ネタにカイは吹き出した。 「やること無いからってか?」 「そうだよ。田舎は他に娯楽もねぇんだよ」  ダンとカイの笑い声に気付いたのか、マティアスが窓を開けて顔を出した。 「おかえりー。お疲れ様」 「おー、レオン。調子はどうだ?」  ダンがマティアスを見て手を振った。 「うん、だいぶ良くなったよ」  そう言うマティアスの顔色はだいぶ良い。負傷から二十日以上過ぎ、魔術で再生された皮膚の下でしっかり血肉が戻りつつある。 「あ、ならさ」  ダンはそう言ってカイにも視線を向けながら言った。 「十月三十一日の夜に祭りがあるぞ。二人も来いよ」 「祭り? どこで?」 「村の広場だよ。出店もあるよ。都会の祭りよりは貧相かもしれんが」 「金はないが……楽しめるか?」 「雰囲気楽しむ分には金はかからんよ。なんなら一杯くらい奢るぜ」 (なら行ってみてもいいか)  そう思い、カイが窓辺のマティアスに目を向けると、マティアスは何も言わないが目を輝かせ、頬を上気させていた。 「行ってみるか?」 「うん、行きたいっ!」  カイの問いかけにマティアスは笑顔を弾けさせた。

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