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第三章 村祭り②
その後もカイとマティアスはそれぞれの店ごとに様々な商品を貰ってしまった。ほとんどの人達が二人を知っており、身一つで来た異国人に対し哀れみの混じった歓迎の気持ちかららしかった。
あとはマティアスの風貌もある。
今マティアスが食べている鶏の臓物を串に刺して焼いた物もなんだか高級食材に見えてくる。
「これ、何の肉だろう?」
「全部鶏だな。さっき食べてた所は肝臓、ここは心臓。これは多分胃袋」
「えっ! 心臓っ?!」
マティアスはそれを聞いてさっきまで気にせず食べていたのに、今度は恐る恐る齧っている。なんだかその仕草が可愛くて、カイはそれを盗み見ながら自身も貰った串に齧り付いていた。
串を齧りながら二人で歩いているとマティアスがふと足を止めた。視線先には地元の子供たちがいた。中央の大きな焚き火に照らされ、上は十二歳、下は六歳くらいの子供たちが十人程集まりじゃれ合って遊んでいる。
「あんなに大きな子でも見えてるのか……?」
マティアスは何かに驚いているようだった。
「子供たちがどうかしたか?」
「ウィル! この国の人達はっ」
「おー! ウィル! レオン!」
その時、誰かに大声で呼ばれて二人は声の方を見た。少し離れた場所に簡易に作られたテーブルと椅子があり、ダンとマルコが数人の若者達と一緒に酒を飲んでいた。
「よお、ダン、マルコ」
「こんばんは」
二人が挨拶をすると、ダンとマルコ以外の若者達がどよめいた。
「この二人があの飛竜の?」
「そうそう」
「やだっ、どっちも凄い美形じゃないっ!」
「だから言っただろ?」
「あ、どーぞどーぞ、ここ座ってくださいっ」
テーブルは蜂の巣を突いたような騒ぎになった。カイはマティアスと離れないように注意しながら椅子に座った。しかしすぐにマティアスは隣の席にいた男に話しかけられ始めた。
「花飾り、可愛いね。綺麗な髪によく似合ってる」
「あっ! これ入口の店で売ってますよ!」
男が口説き口調で言ってきているのに気付かずマティアスは店主の言いつけ通りに花飾りの宣伝をしはじめていた。
「えー、可愛い。私も買ってこようかなぁ」
それを聞いて男のさらに隣に座っていた娘が身を乗り出す。
「ええ、是非! 色んな色や形がありました」
「えー、ねぇ行ってこようよ〜」
マティアスの言葉に娘は友達らしいもう一人の娘と共に席を立った。
「はいはい、ちょっと一個ずれて〜」
そこに空かさずダンがやってきて、マティアスと男の間に割って入った。男は不満そうに渋々と娘が座っていた椅子へ一つ移動した。
「はい、これ約束のやつ」
ダンはそう言ってカイの前に木製のカップを置いた。中身は葡萄酒らしい。
「レオンはまだ酒飲まないほうがいいだろうからこっちな」
マティアスの前には別のカップが置かれる。
「良いのか? 薪集めまで手伝って貰ったのに」
「いーって、いーって」
カイの問いかけにダンは笑顔で答えた。
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