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第三章 金色の光①
祭りの帰り道、カイはマティアスと二人で林道を歩いていた。マティアスは口数が少ない。
「久しぶりに動いて疲れたよな」
「大丈夫だ。楽しかったよ」
マティアスは穏やかに微笑む。
敵対している国の平民の本音。それを目の当たりにして今マティアスは何を思っているのか。カイはその心内 が気になっていたしマティアスが深く傷付いたのではないか心配だった。
「ウィル……私は大丈夫だよ。そんな顔しないでくれ」
マティアスがクスクスと笑う。
「いや、その……すまん」
何を言ったら良いか言葉が見つからないカイ。マティアスはフッと小さく息を吐いた。
明日から十一月。もう冬と言っていい夜空に白い息が吸い込まれていく。
「『奴隷』って……なんだかしっくりきた。だから私は変えようとしているんだって確信にも繋がったよ」
力強くもあり、悲しげでもあり、白い息のように儚く消えてしまいそうでもあるその表情。
平民たちは王家を慕っているが貴族達はどうだろうか。カイの脳裏にマティアスを裸にしてまで尋問した貴族の顔が思い浮かぶ。きっと今回の輝飛竜の暴走もその辺り関わっているはずだ。あんな悪魔の巣窟にマティアスを返したくないとカイは強く思った。
二人で沈黙し歩いていると、マティアスがふと足を止めた。
「ん? どうした?」
カイが振り返り尋ねるとマティアスは顔を強張らせていた。
「何か、聴こえる。なんだ? 誰かが助けを求めてるっ!」
「何も聴こえないぞ?」
「わ、わからないが、聴こえるんだっ! 耳からじゃない。胸の奥に聴こえてくるっ」
マティアスは暗い森を見つめ、キョロキョロと辺りを見回し、「こっちだ!」と言って林道を外れて森へと入って行こうとする。カイは慌ててマティアスの右手首を掴み止めた。
「ちょっと待て! 夜の森に入るなんて危険だ!」
「でもっ! 苦しんでる! 助けないと!」
「心に訴えてくるなんて、魔物じゃないのか?!」
「わならない。でも行かないと!」
「危険すぎる!」
「いざとなったら魔術を使うからっ! ウィルはここで待ってて」
強い視線でカイを見つめマティアスが言う。何か分からないが何か確信があるようだ。
「一人で行かせるわけないだろっ! 俺も行く」
カイはマティアスの手首を離しつつも、すぐ後ろに着いて一緒に森を進んだ。
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