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第三章 金色の光②

 冬に向けて葉を落とした広葉樹の森は月の光に照らされて想像よりも明るかった。堆積した落ち葉をカサカサと鳴らし迷いなく進むマティアス。その後に着いてカイも進む。  途中太い木の棒を拾った。気休めだが持って行くことにした。 「きっとあそこだ!」  マティアスが確信めいて示した方向に大きな洞窟が口を開けていた。 「マジかよ……」  何かいそうな気配を魔力を持たないカイですら感じる。しかしカイの恐怖心とは裏腹にマティアスは見つけた目的地に向って走ろうとする。カイは小声で必死に止めた。 「待てっ、慎重にだ……!」  マティアスが振り向き頷く。そして二人は一緒にゆっくりと洞窟に近づいた。  洞窟の入口まで来ると何か不快な匂いが鼻を突いた。 「何だ……この匂い……」  マティアスが手袋をはめた手で鼻口を覆い顔をしかめる。カイにはこの匂いが何かわかった。 「これは、死臭だ……。生き物が死んだ時か、死ぬ間際にはこんな匂いがする……」  つまり何かしらの生き物がここに居ると言うことは確かだ。それでもマティアスは引き返すこと無く洞窟へと入っていき、カイも続いた。  暗い洞窟に入り、マティアスが手をかざすと金色の光が浮き立ち辺りを照らした。光の妖精たちにより洞窟内が照らされる。そしてそこに存在していたのは金色の鱗に覆われた巨体。 「輝飛竜?! お前、フェイか?!」  その輝飛竜は洞窟の隅にうずくまり弱々しく呼吸をしていた。地面は流れた体液で濡れている。そしてその巨大な生き物は生気の無い目をうっすら開けてこちらを見た。 「ああ、フェイっ! なんてことに……!」  輝飛竜に駆け寄ろうとするマティアスをカイは後から抱きしめ引き止めた。 「駄目だっ! また襲われるぞ!」 「でもっ!」  フェイにとってマティアスは卵泥棒であり、大事な我が子の敵なのだ。瀕死であっても攻撃してくる可能性が高い。手負いの獣ほど凶暴だ。 「フェイ、怪我してるのか? どこが悪い? なんでそんなことに……」  マティアスの疑問にカイは躊躇いつつも答えた。 「負傷箇所は、喉元と左脚の腱だ」 「えっ? 何故わかる?」  マティアスが振り返りカイを見て当然の疑問を口にした。カイは渋々口を開いた。 「俺が、やったからだ……」  カイの答えにマティアスが息を呑んだ。しかしすぐにその時の状況を理解したようでカイを責めてきたりはしなかった。

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