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第三章 金色の光③

「ウィル、ちょっとそこにいて」 「お、おいっ」  マティアスは一人ゆっくりと輝飛竜のフェイに近づいていく。カイはその後から木の棒を構えてフェイの動きに備えつつマティアスを見守った。 「フェイ……すぐ治すから……大丈夫だよ」  マティアスが話しかけながら近づくとフェイは微かな頭を上げ、そして『シャァァァッ!!』と威嚇した。 「レオンッ!」 「……大丈夫。フェイ、ごめんな。大丈夫だから」  そしてマティアスが両手をフェイに向けて掲げるとフェイの身体がほのかに光り始め、その光はどんどん強くなり、洞窟全体を金色に照らし出した。 「フェイ、巻き込んでしまってすまない。ひと月もここで頑張っていたんだね。サラに会いに帰るのかい? いいかい、もしかしたら城に戻ると君は人を襲ったからと処罰されるかもしれない。その気配があったらすぐに逃げるんだよ。君に何かあったらサラが悲しむからね」  マティアスはまるで人に言い聞かせるかのようにフェイに話しかけながら魔術による治癒を進める。その間もフェイは『ゴゴゴゴゴ……』と低く唸り牙を剥き出しにして威嚇している。  やがてフェイの身体は明らかに傷が治り、金の鱗が艷やかに輝き始めた。 「さあ、フェイ、もう大丈夫だよっ!」  マティアスが両手を広げて笑った。するとフェイはぬっと身を起こし翼を広げた。  次の瞬間、フェイが地面を蹴った。 「マティアスッ!!」 「んっ!!」  カイは咄嗟にマティアスに飛びつき抱きしめながら地面に転がった。それと同時に強烈な突風が洞窟内を駆けた。砂ぼこりが舞い、二人とも目を硬く閉じ耐える。  一瞬にして訪れた静寂に二人は恐る恐る顔をあげた。そこにフェイはおらず洞窟から見える夜空に一匹の飛竜が飛んでいるのが見えた。  どっと訪れる安堵感。そして沸き起こる怒りにカイはマティアスを抱き締めたまま怒鳴った。 「また襲われたらどうするんだ!」 「だ、だってほっとけないよっ!」  反論してくるマティアスをカイはさらにきつく抱き締め、そのマフラーの巻かれた首筋に顔を埋めた。 「お前の意識無い時、俺がどんなに心配したかっ! このまま死ぬんじゃないかって……」  祭りで貰った木の花飾りがカイの頬にあたる。衝撃で花びらの一部が折れていてチクチクする。 「……ごめん。心配させて、ごめん」  二人は洞窟に転がったまましばらく抱き合っていた。

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