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第三章 浮気②
マティアスは一人になり、髪をまとめ上げ、服を脱ぐと湯を張った盥に入った。ウィルバートの残り湯だが思ったよりぬるくない。どうやらウィルバートが熱湯を足してくれたようだ。
(ウィルはどこまでも優しい……)
洗いながら自身の身体を見る。女性の様な柔らかさもない太い骨と筋肉の身体。
八年前の成人したばかりの頃はまだ少年らしさが残っていたと思う。あれからもう肌を合わせるような事は無いと思っていたし、王として強くあらねばと思い魔術と並行して剣術も鍛錬してきた。
ダンがこの衝立てを持って来た時、マティアスはウィルバートが入浴時のマティアスの身体を見たくないと思っているのだと察した。ずっとそれに気付かず、これまでウィルバートの前で平気で裸になっていたことに申し訳なくなった。
マティアスは幼少から数ヶ月に一度は魔術師のベレフォードと医者二人の計三人に健康状態を確認されていたし、日々の入浴でも侍女三、四人がついている。だから人前で脱ぐ事に抵抗がない。この前の尋問はかなり特殊な例だったが肌を見せることに関しては何も思わなかった。契約の印を見つけられることが怖かっただけで……。
マティアスは股を洗いつつ、尻の奥の秘めた場所を指で探った。洗いながら中指を入れてみる。
「……っ!」
硬く閉じられた場所。この前は出血してしまいウィルバートを驚かせてしまった。今度はなんとか上手く受け入れたいが……。
マティアスはお湯で濡らし中を洗うように指を奥まで進めてみた。
「ん……っ!」
中指一本でいっぱいいっぱいだ。こんなことになるなら日々慣らし広げておくべきだったと、マティアスは猛烈に後悔し始めた。
「レーオン」
「な、何っ?!」
衝立ての向こうに少しだけ覗く階段の中腹からウィルバートが声を掛けてきた。マティアスは盥の中で慌てて身体が見えないだろう位置に隠れた。衝立ての向こうにウィルバートの顔半分だけが見える。
「あんまり長いと身体が冷えるぞ。早く来い」
「う、うん」
「そこ、そのままで良いから。明日片付ける」
「わかった」
ウィルバートはそう言って二階へと戻って行った。
男の身体だからとか、ちゃんと受け入れられるかとか、もはや現時点で悩んでも仕方ない。マティアスは覚悟を決めて盥から出た。
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