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第三章 浮気④*
厚い胸に顔を埋めていると、ウィルバートにそのままベッドへ倒された。そして顔を両手で包み込まれ再び唇が合わせられた。先ほどと違い今度は深く深く。
ウィルバートに食べられるかのように唇を包み込まれ舐められ吸われる。さらに舌が口腔内に入ってきて自身の舌と絡まる。ウィルバートの顎髭が肌を刺してくる。マティアスはウィルバートの背中に両手を回し、その熱い口づけに酔った。
ちゅっと音を立てて唇が離れた時、絡み合う視線の中でマティアスは尋ねた。
「……娼婦とも、キス、してた……?」
甘さの中に苦く燻る嫉妬心。
ウィルバートからこんなに熱く濃厚なキスを受けた者が他にも居ると思うと苦しくなる。
ウィルバートは少し思い巡らし答えた。
「そう言えば……あまりしなかったかな」
その言葉に少し喜びを感じつつも、今この場で娼婦との行為を思い出させた事にモヤモヤもする。
「じゃあ、私にキスしてくれるのは、なぜ?」
マティアスの質問にウィルバートの黒い瞳が一瞬固まり、そして柔らかに細められた。
「して欲しそうだったから」
少し意地悪に微笑むウィルバートをマティアスは睨んだ。
「間違っておりましたか? 陛下」
「違わない……。もっとして……カイ……」
「仰せのままに」
再びウィルバートの唇が降りてくる。今度はマティアスも積極的に舌を差し出し、ウィルバートの舌と舐めあった。
「んっ……」
微かに声が漏れてしまった。ウィルバートからも荒い鼻息を感じる。時折ピチャ……と鳴る水音にも興奮してきた。
太ももあたりに硬いものを感じた。それがウィルバートの股間だと気付き全身が熱くなる。ウィルバートが自身とのキスで興奮してくれていることにマティアスは強く喜びを感じた。
するとウィルバートの手が寝巻き越しにマティアスの股を撫でてきた。マティアスもまたキスで自分の中心が硬くなり、それをウィルバートに気付かれていた事に羞恥心が込み上げる。
ウィルバートはマティアスのその中心を撫でさすりながら、唇をマティアスの首筋へと移していった。
耳たぶを舐められ、髪の生え際に鼻先を突っ込まれ匂いを嗅がれる。
「んぁっ、カイ……」
ウィルバートの「はぁぁ……」と言う深い呼吸を首筋に感じた。脚の間を撫でていた手が這い上がりマティアスの平たい胸を探り始める。そして寝巻きのボタンを外し始めた時、マティアスはハッとしてその手を握った。
「あっ、カイ。ぬ、脱がさなくて、いいよ」
「ん? あんなに見せてたくせに。今さら恥ずかしいのか?」
ウィルバートがニヤッと笑い言ってくる。
「だったら……わかるだろう? 私は女でも少年でもない大人の男だ。カイが見て楽しめるような身体じゃない……」
マティアスのその言葉にウィルバートの笑顔がやや引きつったものに変わった。
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