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第三章 浮気⑤*
「何を言ってる。俺、今こんなだぞ」
ウィルバートがそう言ってマティアスの太ももにグイッと股間を押し付けてきた。
「うん、嬉しい……。だから、そのままでいて欲しいから……」
抱いている相手が男だと実感して萎えて欲しくない。だからマティアスは思ったまま素直に伝えた。
「女の人、想像してて。うしろからでもいいよ。声もなるべく出さないように気をつける……」
しかしウィルバートから笑顔が完全に消えた。
「……カイ?」
マティアスは不安になり呼びかけた。ウィルバートは無言でマティアスから離れ、ベッドを降りた。
「あっ、えっ、カイ?!」
ウィルバートを怒らせてしまったのかと思い、マティアスは慌てて呼び止めた。するとウィルバートはベッドサイドに置いてあったランプをフッと吹き消した。辺りが暗闇に包まれる。そしてウィルバートがベッドに戻ってきたのを気配で感じた。
「これで見えない。でも触るからな」
ウィルバートはそう言ってマティアスの寝巻きに手をかけた。少し乱暴にボタンが外され、その寝巻きの合間からウィルバートの手が入り込みマティアスの胸を揉むように撫でてきた。
「カ、カイッ?!」
男だと実感させたくなくて身体を見せまいとしたのに、そんなに触られたら平たい胸も硬い肉も分かってしまう。
しかし焦るマティアスをよそにウィルバートはマティアスの肌を撫で回し、首筋も舐めてくる。さらに両方の胸の飾りを探られ、両方とも同時に指の腹で強く擦り上げられた。
「んっ……!」
マティアスの身体が勝手に跳ね、鼻にかかった吐息が漏れる。
「ずっと……ずっと我慢してたんだっ」
ウィルバートが苦しげにそう吐き出した。マティアスは『何を?』と尋ねようとしたが、次の瞬間、ジュルッと胸の飾りに濡れた感触を感じた。
「ぁんっ!」
胸を舐められている。
思わず声が出てしまい、慌てて寝巻きの袖を噛む。しかしウィルバートはそんなマティアスに構うことなく右の胸を舐めねぶり、左の胸は指で摘みクリクリと捏ね回す。
「ふっ……ん……」
唇が一旦離れたと思ったら、今度は左胸に舌を這わされた。傷に近い左側は強く揉んだりせず優しく手のひら撫でられながら、先端を舌でチロチロと刺激される。
脳を溶かすような快感。
下半身がどんどん昂ってしまう。
「んっ……」
袖を噛んでいても漏れ出てしまう吐息。
するとウィルバートが身を離した。
濡れた胸の先端が外気に晒されてひんやりとしてくる。ゴソゴソと衣擦れの音がしてウィルバートはすぐに戻ってきた。そしてマティアスの下半身に手をかけ、囁くように「腰あげて」と指示してくる。マティアスが素直に従うと下着が脱がされた。
「……マティアス」
再び覆いかぶさってきたウィルバートに本当の名前を囁かれ心臓が跳ねた。
ウィルバートはマティアスが袖を噛み顔を覆っていた腕に触れ、それを引き剥がしてきた。
「これじゃあキス、出来ないだろ」
「だ、だめ……、声、出ちゃうっ」
「いいんだ。聴かせて……」
そしてまた噛みつかれるような激しい口づけが降りてきた。
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