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第三章 発覚と崩壊②

 洗濯物を持ち二人で家の中に入ろうとした時、犬の鳴き声がした。見れば四頭の大きな犬に引かれた小型のソリが家の前で止まっている。ソリにはダンが乗っていた。 「やあ、ダン」 「わぁ! 君の犬たちかい」  マティアスとウィルバートが犬ぞりに近づくと犬たちは尻尾を振って二人にじゃれつき、マティアスはさらに顔中を舐め回された。 「あははっ! わかった、わかった! みんな良い子だね」  マティアスは四頭を順番に撫でてやった。  その様子を黙って見ていたダンが切り出した。 「すまんが、二人に聞きたいことがあるんだ」  いつになく神妙な面持ちだ。  ウィルバートがマティアスの顔を見てからダンを見た。 「ああ、中入れよ」  雪が本格的に降り始めた中、三人で丸太小屋に入った。  ウィルバートがダンに座るように促す。 「お茶淹れるね」 「レオン、お茶はいいから……聞いてくれ」  台所に行こうとしたマティアスをダンが止めてくる。いつも明るいダンにただ事でない雰囲気を感じる。不安に思いながらマティアスもウィルバートの隣に座った。 「……お前たちは、本当にフォルシュランドから来たのか?」  その言葉にマティアスは心臓が跳ねた。 「なんだよ、唐突に」  ウィルバートが誤魔化すように笑った。合わせてマティアスも笑顔を作るが引きつったものになってしまう。 「今日、街に行ってきたんだ。それで、フォルシュランドから来たって商人がいて『アルヴァンデールの王様が変わった』って話をしてたんだ」  どくどくと心臓がうるさく鼓動していた。  ウィルバートは何てことは無い世間話のように相槌を打つ。 「そうなのか。それで?」 「前の王様は……輝飛竜に攫われたって言ってて。俺、何か似た話だなって思って、その商人にいつ頃のことなのか聞いたら秋の初めだと言ってて。それでアルヴァンデールの王様ってどんな奴なのかも聞いたんだ。そしたら長い金髪の若くて美しい王様だって……」  ダンがまっくずマティアスを見ている。 「で、レオンがその王様じゃないかって思ってるってことか?」  ウィルバートは鼻で笑った。 「違うって思いたいが、こんなに状況が同じなんてあり得ないだろう!」 「いや、俺たちにそんなこと言われても、単なる偶然だとしか言えないよ。飛竜、多くなってるってことじゃないか」 「だが……」  ウィルバートが平静を装いながら必死に誤魔化そうとしてくれている。だがその言い訳は明らかに無理があった。

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