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第三章 発覚と崩壊③
「……ウィル、いいよ。……ダンにこれ以上嘘をつきたくない」
ウィルバートの腕に手を置き、マティアスは微笑みながら首を振った。ウィルバートが息を呑む。
「じゃあ、やっぱりレオンは、アルヴァンデールの……」
ダンが困惑の表情を浮かべながら確認してくる。マティアスはそんなダンをまっすぐに見た。
「私は……アルヴァンデール王国国王、マティアス・ユセラン・アルヴァンデールです。隠していて申し訳ない……」
マティアスのその言葉にダンは呆然としている。
「ダン、分かってくれ! 隠せと言ったのは俺なんだ。マティアスは重症を負ってたし、この国で正体を明かすわけにはいかなかった。だから、」
その時、ゴトッ! 何か落ちるような音が玄関先から響いた。ウィルバートが急ぎ立ち上がり玄関扉を開けた。マティアスとダンもウィルバートの後から覗き込む。
「ヘルガさんっ!」
ウィルバートが大きな声で呼びかけた方向にヘルガが早足で歩いていくのが見えた。ヘルガはウィルバートの呼びかけには応じず自宅へと向かっていく。
「……やばい。聞かれた」
ウィルバートが眉間を寄せて呟く。
マティアスはどうしたら良いか分からずただ立ち尽くしていた。
「す、すまん! 俺のせいだ……」
ダンが申し訳なさそうに口を開く。
「俺っ、ヘルガ婆さんとハラルド爺さんに話してくるよ! 二人は待っててくれ。悪いようにはしないから!」
そう言ってダンは丸太小屋を飛び出し、エクルンド家へと向かっていった。
玄関先で呆然とそれを見ていたマティアスとウィルバート。足元には皿が落ちていて中身が溢れていた。掛けられていた布巾を捲ると中はミートパイのようだ。夕食用に雪が酷くなる前にヘルガが持ってきてくれたのだろう。割れずに済んだ皿をウィルバートが拾い上げた。
「……ここはひとまずダンに任せよう」
小屋の中に入り、ミートパイの溢れた部分を拭きながらウィルバートが告げてきた。
「だが、最悪ここからすぐに出ていかなければならない。旅支度はしておこう」
終わる。
楽しかったここでの生活が終わるのだ。
マティアスはハラルドとヘルガに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
不安と悲しさで黙り込むマティアスをウィルバートが抱き寄せた。
「マティアス。大丈夫だ。何があってもお前は俺が守る」
「ウィル……」
マティアスもその背中に手を回しきつく抱き返し頷いた。
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