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第三章 発覚と崩壊④

 日が沈み、降り積もる雪が辺りの音を吸い込み、静寂に村と森が包まれていた。  雪を踏みしめる音と玄関先で靴に付いた雪を払うドンドンと響く音の後、扉がゴンゴンとノックされ「いるか」とハラルドの声がした。  ウィルバートが急ぎ扉を開ける。 「ハラルドさん」 「おー。いやぁ、よく降るな」  ハラルドはそう言いながら頭や肩に積もった雪を払いながら家に入ってきた。 「メシ、食ったか?」 「あ、いえ……まだ……」  いつも通りのハラルドにウィルバートが戸惑いながら答える。 「鹿のパイあるだろ。ああ、これだ。あっためて食え」  ハラルドはテーブルに置いてあった皿を暖炉内の鉄輪(かなわ)の上に乗せた。そしてハラルドはマティアスを見て笑った。 「はは、レオン。なんちゅう顔してるんだ」 「ハラルドさん、私は……」  マティアスは零れそうになる涙をグッと堪えた。今ここで泣いて許して貰おうとするのはあまりに卑怯だと思ったからだ。 「お前さん、そんなに弱々しくて、本当に王様なんかやれてんのかね」  ハラルドはそう言いながら椅子に座った。そのハラルドに向ってマティアスは誠心誠意を込めて頭を下げた。 「ハラルドさん。騙すような真似、本当に申し訳ありませんでした! 息子さんが住むはずだったこの家をよりにもよって私が使わせて貰うなんて……何も言わないのは、あまりに……不誠実でした」  涙を堪え言葉を紡ぐマティアスに付け加えるようにウィルバートが口を開く。 「俺が言ったんです。素性を明かすなって。レオンを……意識が無いマティアスを背負って森を歩いている時からどうやって隠そうかと考えてました。もし知られたら……殺される可能性だって十分あると思ったから……」  二人を見ながらハラルドは変わらない調子でウィルバートに尋ねる。 「ウィル、あんたはレオンの家来か何かか?」 「いえ、俺はただの仕立て屋で……」 「ただの仕立て屋が、飛竜に捕まった王様を助ける為に付いてきたんかい」  ハラルドはギョロッとしたさらに目を大きく見開いた。 「そう、です……。俺は、この人に憧れてたから……絶対死なせたくなくて」 「お前、必死だったもんなぁ……」  ウィルバートの告白じみたその言葉にマティアスは心臓を掴まれる感覚がした。 「ハラルドさん、無理なお願いですが、春までもうしばらくここに置いて頂けないでしょうか」  さらにウィルバートはハラルドに向かい願い出た。

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