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第三章 告白と告白②
カイは帰還の際にどうするのが安全かずっと考えていた。輝飛竜に襲われた事自体が国王暗殺未遂事件だ。その現場に軽々とマティアス本人を連れて行くのは憚れる。
「ちょっとしゃべりすぎだな」
カイは苦笑いで誤魔化した。しかしダンはなんとなく状況を察したようだった。
「なあ、レオンの代わりの長はもう立ってるんだろう?……ならさ、別に帰らなくても良いんじゃないか?」
ダンが踏み込んできた。
それはカイも思っていたことだった。
「……ああ。正直、あんな所に帰したくない」
カイは初めてその思いを口にした。実際に言葉にした途端、それはより強く胸に響いてくる。
「そうだよな! だってあそこで長やってるって事はさ、あの災害があったら……。あっ! 俺達、祭りの時にレオンに酷いこと言ってた! 本人に向って奴隷だなんて……」
ダンは自分も含め若者達が話した内容を思い出し慌ててた様子だ。
「あれは、レオンも納得してた。だから変えたいと思ってるんだって言ってたから」
カイが少し笑いながら説明するとダンは少しホッとしたようだった。
「そうか。責任感強いんだな……。何か今のレオンとイメージが違うな」
「ああ。長やってる時のレオンは全然違う」
「……じゃあ、ここでのレオンはウィルに甘えてるんだな。それが本当のレオンだろ?」
「どうかな」
カイは少し考える。
貴族に臆すること無く威厳を放つ王としてのマティアス。カイの前ではよく笑い、甘え、怒り、すぐ泣くマティアス。
「どっちも本当のあいつだけど、でも、俺と居るほうが絶対に幸せなはずだ」
カイの宣言にダンが口笛を鳴らした。
「そこまで想ってるならもう腹くくれよ。このままこの村で暮らすのも良いと思うぜ。ハラルドさんちが駄目そうなら俺が紹介してやるし」
ダンが頼もしい事を言って背中を押してくれる。
カイとしてはこのバルテルニア王国にマティアスが居続けるにはかなりリスクがあるように感じている。永住するならフォルシュランドが良い。以前フォルシュランドの浜辺を見たいとマティアスが言っていたことを思い出した。
「レオンがこの先も俺と暮らすことを了承してくれたら、その時相談するよ」
「おう! 頑張れよ!」
カイはダンを見て頷いた。
それはまさに求婚の決意だった。
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