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第三章 告白と告白③

 三月二日。よく晴れた朝だった。 「うあ~、寒っ!」  外に出た途端マティアスが首をすくめた。  三月とは言え朝の寒さは肌を切りつけるような鋭さだ。 「天気いいから余計寒いな。でもこれならいけるんじゃないか」 「ああ、どんな感じなんだろう」  マティアスが目を輝かせカイを見てくる。  ここ数日の鬱々とした表情と比べるとだいぶ明るい。ワクワクが抑えられない顔だ。 「よし、行こう」  カイの呼び掛けに外套を着込みマフラーと手袋をしたマティアスは緑の瞳を輝かせて頷いた。  一昨日、仕立ての依頼で来ていた村人が教えてくれた。この時期、降り積もった雪の上を沈むこと無く歩くことができると言うのだ。  春が近くなり昼間の気温が高くなると積もった雪の上層部分が溶けてくる。しかし夜は気温が低いのでその日中溶けた部分がカチカチに凍るのだ。人が上に乗っても平気なくらいに。村の子どもたちはその硬くなった雪の上で駆け回り遊ぶのだと聞いた。  二人並んで歩きながら乗れそうな場所を探す。 「あっ! ここ硬くなってるよ!」  マティアスが手袋を嵌めた手で通路脇の雪を叩いた。カイも拳で叩いてみる。 「本当にカチカチだ。よし、上がってみるか」  腰くらいの高さの雪の壁にカイが先によじ登った。 「おお、本当に乗れる! ほら来いよ」  そう言ってカイはマティアスに手を差し伸ばし「よっ」と声を出しつつ雪の上にマティアスを引き上げた。 「わっ、凄いっ! 魔術みたいだ!」  魔術を使えるマティアスがそんな事を言うのでカイは「アハハ」と笑った。 「これ、どれ位強いんだ?」  カイは疑問に思い、足元の硬い雪の上で軽く飛び跳ねた。すると底が抜け片脚がズボッと埋まった。それを見て今度はマティアスが笑い出す。 「そりゃそうだよっ、そっと歩かないと」 「そうみたいだな」  マティアスの手を借り穴から抜け出し、なんとなくそのまま手の離さず二人で雪原を歩いた。  空はどこまでも青く澄み渡り、白く眩しい太陽が光り輝いていた。積もった雪がその陽射しを受け微細な氷の粒がキラキラと反射している。 「綺麗だなぁ……」  眩しさにマティアスが目を細める。  陽射しと雪の反射に白い肌が照らされ、キンと張り詰めた冷たい風が金糸の髪を靡かせている。 「ああ、綺麗だ……」  カイはマティアス見ながら呟いた。  寒さに頬と鼻の先が赤く染まっているのは可愛いと思った。 

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