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第三章 告白と告白④
手を繋いだまま歩いているとマティアスが「うわっ!」と叫んだ。見ると左脚が埋まっている。
「びっくりしたぁ。普通に歩いてただけなのに。ウィルより重いのかな」
身長差から明らかに体重があるのはカイの方だ。単に凍った雪が薄かっただけだろう。
「ほら、大丈夫か?」
「あっ、待って。靴脱げそ……わっ!」
今度は右脚も雪に埋まり、マティアスはバランスを崩しカイを押し倒すようにして二人で雪上に倒れ込んだ。倒れた衝撃で雪面が身体に合わせてミシリ、と割れ沈む。
「ご、ごめん。本当に体重増えたのかな。ダンにお腹出てくるぞって言われたのが現実になってしまう」
ダンの妊娠を仄めかした下品な冗談を、マティアスが未だ純粋に捉えているのが可笑しくてカイはマティアスを抱き留めたまま「クククッ」と笑った。
「えっ、やっぱり太ったか?」
マティアスがカイの腹に乗ったまま不安そうに尋ねて来て益々おかしくなった。
「変わってないよ。もっとも太ったらそれはそれで抱き心地は良さそうだけどな」
「そ、その方が好みなら……もっと太るよ」
マティアスが目元を染めて上目遣いで尋ねてくる。
カイはマティアスを膝に乗せたまま上体を起こした。
「どっちでもいいよ」
そしてその滑らかな頬を撫で言葉を繋げた。
「どんなマティアスでも……好きだよ」
エメラルドを嵌め込んだような瞳が大きく見開かれる。
この村に来てから何度も肌を合わせたが、カイがこの気持ちを明確に言葉にしたのは初めてだった。
カイは立ち上がり、呆然と座り込み固まるマティアスのその手を取り立ち上がらせた。そしてその手は離さずに言った。
「なあ、マティアス。このままここで二人で暮らさないか。ここでなくてもいい。フォルシュランドの海辺の近くに家を借りるでも良いよ。二人でなら、どこでもいいんだ」
マティアスの顔はみるみる赤くなり、緑の瞳は揺れ、唇が震えだした。
カイは深く息を吐き、意を決してその言葉を口にした。
「マティアス、愛してる。俺だけのものになってくれ」
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