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第三章 想い②

「まったく、お前は本当に女に対しては最低な奴だったわ。女を『穴』としか思っておらん。だから刺されるのだっ」  そう言えば森から抜け出し街に出て、親しくなった娘に結婚を迫られ、断ったら刺された事があった。 「あれも生き延びたのはヴィーの力か」 「そうじゃ。そなたの身体が瀕死になると勝手にわしの身体から魔力が吸われるのだ。契約は絶対的な拘束力があるからな。それがなかなかの負担でな。怪我を避けさせた方が楽だったからこの姿で相手をしてやってたのだ。まあ、マティアスにそれを言ったら激怒されたがな」 「ひょっとして、この前二人が喧嘩したのって、その事か?」 「そうじゃが」  カイは思わず吹き出した。過去のウィルの浮気に嫉妬しているのかと思っていたが、マティアスはカイの娼館通いに怒っていたのだ。あんなに泣いて激怒してくれたなんて、嬉しくて思わずニヤけてしまう。それと同時に他人事のように考えていたことを申し訳なくも思った。 「お前は……記憶を失ってもいつもマティアスを求めてたな。まあ、記憶剥奪の施術中にマティアスが暴走したからな。術が途中で止められて深層部分がかなり残っていたようだ」  確かにいつも焦燥感があった。  マティアスを見て惹かれたのは金髪が好みだったからと思ったが逆だった。マティアスの面影を求めて金髪の女たちを求めていた。しかし満たされることは無かった。 「マティアスも同じだ。常にお前を求めて、全てお前を中心にして動いている。……お前、マティアスをちゃんと慰めてやれ。今あやつはお前が離れていくのではないかと恐れ怯えている」 「えっ」 「帰ってからちゃんと話をしてないだろう。あやつは不安で今にも潰れそうだぞ」  いつの間にかいつもの金髪の姿に戻ったヴィーから諭された。  カイはマティアスから離れる気など全く無かったが、あまりの出来事でちゃんと話して無かった事に今更気付いた。 「ああ。ちゃんと話すよ。……ヴィー、お前って良い奴だな」 「お前たちはわしの良い暇潰しになってるからの」  ヴィーは「ふふん」と鼻で笑った。 「おぉ、マティアスが起きたぞ。お前と二人で居るとまた嫉妬されるからな。じゃあな」  ヴィーはそう言うといつものように燃えるように消えた。

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