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第三章 想い⑤*

 暖炉の前で何度もキスを繰り返し、マティアスの身体と気持ちが温まったと感じたカイは二階の自身のベッドにマティアスを引きずり込んだ。 「んぁっ……ウィル……」  寝巻きの中に手を入れ、その滑らかな肌を撫でながら頬や首筋にも唇を這わせる。 「あっ……ウィルって言っちゃった……」  マティアス自らの白状にカイは微かに笑い肩を揺らした。 「もう、どっちでもいいよ」  マティアスが発する『ウィル』も『カイ』も両方とも自分を差しているのは明白だ。そもそも真実を知らされる前から、近頃は『ウィル』と言う呼び名が自分のものになりつつあると感じていたが。 「……それとも、お仕置きされたい?」  首元から顔を離し、緑の目を見つめて尋ねるとマティアスは恥ずかしそうに目を逸らした。 「そ、そんな事、言ってないっ……」  初めてここで肌を合わせた時は灯りを消したしかし、今はランプをつける事が許されていた。仄かで柔らかな灯りがマティアスの潤んだ瞳に映っている。 「そんな顔されると、すげぇいやらしいことさせたくなる」  カイがニヤけながらそう言うと、マティアスは目を腕で隠し、蚊の鳴くような声で呟いた。 「カイが望むなら……」  マティアスの腕から下に唇が覗く。何度も口づけを重ね、カイが舐めねぶり、濡れてふっくらとしたその赤い唇。カイにはもはや性器同様に卑猥なものに見えてくる。  マティアスの腕を退けながら、その唇を再び吸った。 「んっ……」  柔らかな唇を味わいながら寝巻きの中で胸の飾りを探り当て指で摘み、クリクリと転がす。 「ぁんっ!」  胸への刺激に弱いマティアスが身体をビクリと跳ねさせた。 「騎士様が……いや、過去の俺がしなかったようなやらしいことさせたい。してないこと無い?」  感じやすい身体を弄りながら尋ねると、マティアスは緑の瞳を揺らし困惑の表情を浮かべた。 「そっ……そんなの、わかんないよっ」  確かにごもっともだ。健全に箱入りで育てられたであろう王子様はきっと夜の営みのアレコレをそれほど知っているとも思えない。  カイはマティアスの寝巻きの前を開き、その胸を露わにして尋ねた。 「俺、胸、舐めてた?」  カイの問いかけにマティアスは恥ずかしそうに頷いた。その答えに『そりゃそうか』と思った。過去も自分自身だ。この魅惑的な薄紅色の粒を目の前にしたらしゃぶり付くに決まってる。 「これ、昔の俺も好きだったんだろうな」  そう言ってそのツンと勃ち上がった突起に舌を這わせる。 「はぁんっ……」 「ん? 気持ちイイか?」 「ん……気持ちい……好きっ……。ウィルに、触ってってお願いしたことあって……っ」 「ハハッ、そんなお願いされたら、たまんなかっただろうな」  しかもそれは十八歳になる前のまだ少年のマティアスのはずだ。カイは過去の記憶を取り戻せたらどんなに良いかと思った。

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