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第三章 震①
三月五日の遅い朝。
マティアスはウィルバートの胸に抱かれて微睡んでいた。日が昇り始めた早朝に昂ったウィルバートが求められそれに応じ、その後また二度寝をしてしまった。マティアスはウィルバートの顎髭を指先で弄びながらその寝顔を見つめた。
ウィルバートからの告白を受けてから後の丸二日間。三月だと言うのに空からは大量の雪が降り、それまでの青空が幻だったかのように一気に真冬へと逆戻りした。しかし、想いを通わせたばかりの二人には好都合だった。
誰も来ないだろうことを良い事に一昨日からウィルバートには何度も求められ、マティアスもまた求め続けた。抱かれながら『好きだ、愛してる』と言われ、『好きだ、愛してる』と返す。想いを隠す必要も無く、相手の心持ちに不安を感じることも無い。
これほど幸せだったことがあっただろうか。
「好きだ」と何度も言っているとまたさらに想いが高まっていく。マティアスは愛しい人の顎髭に頬擦りした。するとマティアスの腰を抱いていた太い腕がするりと下がり尻を撫でてくる。寝巻きの上だけ羽織り下は下着すら着けていないので下半身は素肌だ。
ウィルバートの指がマティアスの双丘の谷間を探り始めた。
「んっ……起きてるのか?」
不審に思い小さな声で尋ねるとその肩がスクスクと揺れた。
「寝てる……」
ウィルバートはそう言ってマティアスの背中と尻を抱き寄せ、その首筋に顔を埋めてきた。
「返事してるじゃないか。んぁっ……カイっ」
ウィルバートの右手がマティアスの尻を撫で探り、中指が蕾に触れてくる。
「痛くなってないか?」
「ん……大丈夫。でも、もう駄目だぞっ」
ウィルバートはマティアスの身体を気遣いつつもその綻んだ蕾にふにふにと指を潜り込ませてくる。
ウィルバートはマティアスの許可なく我がモノ顔で身体に触れてくる。恥ずかしいと感じる部位であってもだ。キスは予告無しでしてくるし、当然の様に舌も入れてくる。王族に対して実に失礼で無礼な態度だ。だがそれをマティアスはひっそりと喜んでいた。
「もう一回だけ、駄目?」
そうねだるように言われマティアスは戸惑う。しかしカーテンの合間からは明るく陽が差し込んできている。
「だ、だって、もう晴れてるよ? 今日はお客さん来るよ、きっと」
マティアスの言葉を無視するようにウィルバートはマティアスの鎖骨に舌を這わせてくる。
「も、もうっ! そ、それに……そんなに一度にして、飽きられたら嫌だ……」
するとマティアスの言葉にウィルバートが顔を上げた。
「それは無い」
迷い無く真顔で即答され、マティアスは顔が熱くなるのを感じた。
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