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第三章 春の庭②
「そりゃ、お前が遠慮して出来なかっただろうアレやコレを全部マティアスにしてるからなぁ」
カイのその惚気にウィルは呆れたつつも小さく呟いた。
「それは、羨ましい……」
「や、やめてよっ! 恥ずかしい!」
そんな二人に挟まれてマティアスは顔を赤らめ抗議してきた。
「マティアス様、貴方は完全には死んでいない。希望はあります」
頬に手を当てて恥ずかしがっているマティアスにウィルが真面目な顔で切り出した。
「マティアス様とここで再会する前に、マティアス様によく似た気配を持つ方が近付いて来たと感じて、必死に助けを求めました。あちらも私の呼び掛けに気付いていたと感じます」
「私によく似た……? でももうアルヴァンデール王家に魔力を使える者は……」
「王族の隠し子とか、分家の末裔とかか?」
カイは疑問に思い聞いた。
「私にも良く分かりませんが……なんというか違う世界というか、次元というか、近くて遠いどこかから来ている感覚でした」
「なんだそれ。曖昧だな」
カイの指摘にウィルはムッとして睨んできた。
「マティアス様がここに来て私もこうして実態化していますが、それまでは曖昧な存在でただ漂ってるだけでしたから」
「ウィル……っ」
その説明にマティアスは苦しげに呻きウィルをそっと抱き締めた。
「すまない、ウィル。長い間、淋しい想いをさせて……」
「マティアス様、私は大丈夫です。それよりも最期の時、貴方を罵ってしまった事が貴方にとって呪いになってしまった。すみませんでした」
マティアスは涙を浮かべながら首を振った。
するとマティアスの身体がほのかに光り始めた。
「な、なに?」
マティアスが驚き両手を見つめる。その手は薄っすらと透け始めた。
「ああ、きっと助けに来た方たちがマティアス様の蘇生を試みています。大丈夫ですよ。マティアス様」
「ウィ、ウィルは?!」
「ここにいるもう一人のウィルもきっと助けて貰えます」
「お、お前はっ………」
マティアスはウィルにそう尋ねている途中で消えた。
「私は、死んだ者とは違うから……」
マティアスが消えた場所を見つめてウィルが淋しげに呟いた。
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