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第三章 英雄②

 ウィルバートの身体を三人で囲み、蘇生を開始した。するとマティアス、セラフィーナ、クラウスの身体が光り、夜明けの薄暗い空に三本の光の柱が立った。そしてウィルバートの生命活動が停止したその身体も金色に輝き出す。 「……大丈夫。マティアスの時と同じ感触だわ。まだ魂は繋がってる」  セラフィーナの呟きにマティアスは希望を感じた。  蘇生と同時進行で身体の治癒も行う。三人で手分けし必死に術を発動させ続けた。  だが、 「くっ……なんだこの重い感じはっ!」 「マティアスと何か違うわ! 魂を二つ一度に引いているような……!」  ただならぬ気配にマティアスは大声でウィルバートに呼びかけた。 「ウィルっ! 帰って来いっ!! ウィル!!」  するとウィルバートの身体がビクリと動き、口が開き大きく息を吸ったのが分かった。 「やったわ! 成功よ!」  マティアスはウィルバートに駆け寄りその胸に耳を当てたるとドクン、ドクン、と心の臓が鼓動しているのが伝わってきた。 「ウィル! ウィル!」  マティアスはウィルバートの顔を覗き込み必死に名前を呼んだ。涙がボタボタとウィルバートの頬に落ちていく。するとその瞼が震え黒い瞳を覗かせた。 「ウィル!」  焦点の定まらない黒い瞳はマティアスを見つめ、そっと伸びてきた大きな手がマティアスの頬に着いた砂を払ってきた。 「マティアス……さま……?」  そして微かに溢れた低い声。状況が掴めないのかぼんやりとしている。ウィルバートに敬称付きで名を呼ばれたのは半年ぶりだろうか。 「ウィルっ! ウィルぅ……良かった……!」  頬を撫でるその手を両手で握り、マティアスはウィルバートが生き返ったことに安堵し咽び泣いた。 「ま、マティアスっ!」  するとウィルバートは驚きながら上体を起こし、マティアスを抱き締めてきた。人形のように動かなかったその身体は今はとても力強い。マティアスもまた力を込めてその背中に腕を回した。 「ああっ、ウィルっ!」  するとウィルバートは抱擁を解き、マティアスの顔を確認するかのように目を合わせてきた。夜明けの薄明かりに照らされたその黒い瞳。 「マティアス……」  愛しそうに名が呼ばれ、ウィルバートが唇を寄せてきた。マティアスもまた引き寄せられるように自ら唇を差し出した。深く深く唇を合わせながらウィルバートが合間で囁く。 「マティアス、ウィルも、ウィル――も連れて帰ってきたぞ……。全部、思い出した。俺はカイであり、ウィルバート・ブラックストンだ……」  ウィルバートの言葉にマティアスは目を見開き固まり、そして再び目を細め涙を溢れさせた。 「う、ウィルぅぅ……」 「ああ、マティアス……愛してる」

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