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第三章 帰還③
「マティアス陛下……それにまさかクラウス殿下とセラフィーナ殿下?!」
ウィルバートとクラウスに拘束され、覆面を取られた暴漢達は無抵抗に呆然とその場に膝をついた。
「お前たちに指示したのはクレモラ卿だな」
マティアスが暴漢三人に言うと三人とも息を詰まらせた。その表情はそれを肯定していた。
「自ら実行役に指示するなんてずいぶんマヌケだな」
クラウスが鼻で笑う。
「きっと、バルヴィア山が予想外の変化を見せたので私が戻った可能性に気付いたのでしょう。それで慌てて証言者を始末しようとしたのでは」
「この国の一大事に、ある意味よく頭がまわるわね」
マティアスの予想にセラフィーナは呆れたように溜め息をついた。
「オーケルマン殿。お久しぶりです。混乱している所申し訳ないが御息女をお借りしたい」
マティアスはオーケルマンとマリアンナに近付き膝を折り話しかけた。
「ああ、陛下っ! 娘がしたことは聞いておりますっ! 大変なご無礼、どう償ったらよいかっ!」
オーケルマンは床に付ける勢いで頭を下げた。
「マリアンナが私を思ってをしたことだと理解しています。悪いようにはしませんのでご安心を」
「陛下……!」
マリアンナはマティアスを見つめ、涙を滝のように溢れさせ子供のように泣いていた。
「陛下っ、そしてカイ様! も、申し訳……ござい……んでしたっ! 私、陛下が、王様で無くなったら……もっと自由に生きられるって、思ってしまって……!」
「うん……周囲にそう思わせるほど、私は自分自身の人生を楽しむことを諦めてしまっていたからね。心配かけてすまなかった」
マティアスはマリアンナの頬を撫でその涙を拭うと大きな笑顔を向けた。
「マリアンナ、お前のおかげで実に楽しい休暇を過ごしてきたんだ。嫌味じゃないぞ。本当なんだ! これまでの人生で一番楽しかった! なあ、ウィル!」
マティアスがウィルバートにも顔を向けるとウィルバートもまた照れたように笑った。
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