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第2話

 花火大会が行われる広場の近くにある駐車場に車をとめると、剣上と友一は仲良く肩を並べて広場のほうへ向かった。  剣上の言った通り、それほど規模は大きくなさそうだが、人は予想以上に多かった。花火がよく見えるベストポイントに近づくごとに、人は増えていく。 「友、はぐれるなよ」  剣上がその言葉とともに友一の手を握ってくれた。  そのまま手を繋いで歩きだす。 「いいの? 先生、遠いからって知り合いが来てないとは限らないよ? ぱったりと会っちゃったりして……」  剣上の少しひんやりとした大きな手をギュッと握り返しながら、友一が言うと、 「そのときは見せつけてやればいいさ」  彼は端整な顔を微笑ませる。普段学校で絶対に見せない優しい表情は、友一だけの独占物だ。 「そうだよねー。オレたちってすごくお似合いのカップルだもんね。学校一のイケメン教師と――」 友一の言葉の続きを剣上がさらう。 「美貌の王子様のカップルだからな」  クスクスと笑い合ったとき、最初の花火が上がった。  さすがにベストポイントだけあって、よく見える。  近くで見る花火はとても迫力があり、綺麗だった。花火が開くときの、ドン、という音がおなかに響く。  剣上と友一は手を繋いだまま、次から次へと打ち上げられる花火に見入っていた。  と、不意に友一は太ももの辺りに違和感を覚えた。  剣上がいる左側とは反対側の太ももに、人の手が触れているのを感じるのだ。  え? ま、まさか、触られてる?  う、ううん。こんなにたくさんの人だもん。偶然ちょっと当たっているだけだよね……。  そう思いながらも友一が横目で右隣を盗み見ると、中年の男性がぴったりと密着して立っている。むき出しの腕がねっとりと汗ばんでいて気持ちが悪かった。  そうこうしているうちにも太ももに触れていた手が、お尻のほうへ移動してくる。  気のせいでも人混みのせいでもなく、明らかに触られているのが分かった。  ひっ……、せ、先生……。  隣の剣上に助けを求めたかったが、恐怖とおぞましさで、声は喉に詰まったようになり、体は凍り付いたように動いてくれない。

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