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第3話
友一が抵抗しないせいか、手はだんだん大胆になっていく。友一の薄手のハーフパンツの上から双丘を揉んできた。
やだ……、助けて! 先生っ……。
友一が剣上の手を強く握った次の瞬間、お尻を這いまわっていた不快な手は離れ、男の悲鳴が上がった。
「……ってぇ! やめ……折れ、折れる……!」
見ると剣上が男の腕をひねりあげている。痴漢の存在に気づき、助けてくれたのだ。
剣上はすさまじい怒りのオーラを発しながら、痴漢の中年男へ言い放った。
「オレのものに触りやがって……!」
剣上はもともと冷たく見えるタイプの美形である。本気で怒れば、その迫力たるや半端ない。
このままだと痴漢男の腕を本当に折ってしまうだろう。
「せ、先生、もういいよ。ね、みんな見てるから……」
友一は必死に彼をとめた。
事実、周囲の人たちは何事かと好奇の目を友一たちに向け始めている。
剣上は舌打ちすると、乱暴に男の腕を離した。痴漢男は慌てふためいて人ごみをかき分け、逃げて行った。
「友、帰ろう」
剣上は、友一の手を再び強く握ると、人の波に逆らうようにしてその場を離れた。
二人は駐車場へ戻ってくると、車へ乗りこんだ。
すぐに車が走り出す。
剣上の端整な横顔にはまだ怒りの感情が残っていた。友一は彼の顔を見つめる。
彼が友一を痴漢から助けてくれ、友一のために、あんなに激しい怒りを見せてくれたことへの甘やかな気持ち、いまだ怒っている彼がちょっぴり怖い気持ち、自分のせいでせっかくの花火大会を台無しにしてしまったという罪悪感めいた気持ち、それらがごちゃまぜになっていた。
「……先生、ごめんね? せっかくの花火大会だったのに……」
友一がしょんぼりと言うと、ふっと剣上から怒りのオーラが消えた。そして友一のほうへ手を伸ばしてくると、髪をそっと撫でてくれる。
「友のこと、怒ってるんじゃないよ。オレの友に触りやがったあの野郎が許せないんだ」
「お尻をちょっと撫でられただけだよ」
……まあ、それでも充分気持ち悪かったけど。
「おまえの全てはオレのものだ。友、おまえに触れていいのはオレだけだ」
「先生……」
その思いは友一だって同じだった。
先生に触れていいのはオレだけ。オレが触れられたいのは先生だけだよ……。
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