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④ 転生について調べても、あまり進展はありません
数日過ごしてみて分かったことは、アルはだいたい日の入りから日の出まで人の姿になれる。ライオネルはほぼその真逆。
なにか不思議な力が働いていて、その力が強い時は完全に人間体を保てるけど、弱くなると猫獣人の姿でしかいられず、完全に弱まると猫になる。
入れ替わる時間は少し曖昧で、交差する少しの間だけなら、二人同時に猫獣人の姿でいられるようだ。
会話だけなら完全に猫でも、相手が獣人なら会話は可能ということも分かった。
けれどやはり調べ物をするには、人間体か獣人の姿の時のほうが効率が良いので、タイミングの合う時を見計らって、情報収集をした。
まずは、アルは転生前の記憶が残っているから、その経緯の説明。
ライオネル自身も転生者だが、記憶は全く残っていないという事と、この街に転生してからの事を話した。
時には外へ出て調べたりした。
「アルと俺が転生してきたあの公園に、何かがあると思うんだけどなぁ……」
「にゃーん……」
ライオネルは机の上に地図を広げ、公園の位置を指でトントンとたたいた。それに相槌を打つように、隣でアルがにゃんと一声。
今日は書店の定休日なため、仕事は休みだ。昼間から転生についての情報をまとめていた。
とは言っても、周辺での聞き込みや過去資料なども探してみたものの、転生についての解明への糸口は、なにひとつ見つかってはいなかった。
結局何も進展がないまま、半年が過ぎようとしていた。
アルは人間や猫獣人の姿にも慣れ、ここでの生活にもすっかりと馴染んでいた。
転生についての進展はなかったものの、時々違和感を感じるようになっていた。
猫の状態のアルを見ていて、あれ? なんかこの仕草を見たことあるような? という錯覚に陥る。
いわゆるデジャブなのかもしれないが、どうもそのひとことだけでは片付けられないような気がしていた。
「アルは、飼い主さんと話がしたいから、人間になりたいって願ったんだよね?」
「うん。弱ってた僕を助けてくれて、なのに病気で大変だったと思う。でもとっても大切にしてくれたから、僕は幸せだった。……会ってありがとうを伝えたいんだ」
アルがレオの話をする時は、とても嬉しそうで、なんだかそれが少し羨ましい。
ライオネルには、転生前の記憶がないけど、同じように大切に思っていた人はいたのだろうか。
このまま、アルの夢も叶わないのだろうかと諦めかけた頃、珍しい来客があった。
ライオネルは夜には完全に猫の姿になってしまうから、まだ明るいうちにカフェは締めることになっている。そのために片付けをしている時だった。
「すみません、まだよろしいですか?」
遠慮がちにドアを開けて顔を覗かせたのは、漆黒の髪が印象的な青年だった。
「あー、すみません。もう閉めるんですよ……」
申し訳なく思いながらも、流石に雇われてる身としては、勝手な事はできない。
丁重にお断りしようとしたら、ドアの向こうから驚いた声が聞こえてきた。
「あ、あの! すみません!」
青年の後ろからした声は、ライオネルのよく知る声だった。
「はい、なんでしょう?」
急に話しかけられ、青年はびっくりして振り返り、戸惑いながら返事をした。
「いきなりすみません、お聞きしたいことがあるんですけど、少しお話できませんか?」
青年に声をかけたのは猫獣人の姿のアルで、今度はライオネルの方へと向いた。
「ごめん、少しでいいから、席を借りていいかな? 戸締まりはちゃんとして、鍵を返しに行くから」
「分かったよ。俺からヘレンに伝えておく。戸締まりはしっかりな」
「ありがと!」
少々不用心かと思うけれど、この小さな街では皆顔見知りで、あまり気にする者はいなかった。
ただ、この青年にはあまり見覚えがなく、ライオネルは少し首を傾げた。
書店の二階にいるヘレンのもとへ向かうと、事情を話してから、完全に猫になる前にと急いで自宅へと戻った。
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