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⑤ 念願叶って、再会できました

「引き止めちゃってごめんなさい。僕、アルっていいます」  先ほど閉店間際のカフェに顔を出した青年を引き止めたアルは、カフェでその青年と向かい合わせに座ると、自己紹介をした。 「俺は、レオナルド。みんなレオって呼ぶよ」  そう言ってニッコリと微笑んだ青年を見て、アルはパァァァっと顔を明るくした。  自分の予想が合っているのなら、こんなに嬉しいことはないから。    ワクワクとした気持ちを抑えて、アルは言葉を続けた。 「間違っていたら、ごめんなさい。……前に、真っ白な猫を飼っていませんでしたか?」 「うん、飼っていたよ。……病気で亡くしてしまったけどね」 「ああ! やっぱり!」  アルの頭の上にある耳はピクピクと動き、おしりから生えているしっぽは、嬉しさでゆらゆらとゆっくりと揺れる。 「僕、その白猫のアルです。……レオに会いたくて、生まれ変わったんです!」  眼の前にいるレオは、確かにアルの記憶の中にあるレオとそっくりだ。  漆黒の髪が綺麗でいつも見とれていた。人間の中でも人種があって、黒髪が多いのだと言っていた。  探し求めていたレオが目の前にいる。アルは興奮で走り出したい気持ちでいっぱいだった。 「ありがとう。……生まれ変わってまたこうして会えるなんて、奇跡だね」  ニコニコしてそう答えるけれど、本当に生まれ変わる前にレオだったのなら、もっと喜んでくれるはずだ。  でも目の前のレオは、まるで他人事のような受け答えしかしてこない。    それに、アルは病気で死んで、異世界転生をしてきた。その世界に、アルが会いたいと願っていた飼い主のレオがいるのなら、アルと同じように外見が変わっている可能性が高い。  けれど、ほんの少し湧き出た違和感は、アルもこの世界に来たばかりで常識もわからないからだと思い、胸の奥に仕舞った。   「ずっと会いたかった。ありがとうって言いたかった」  カフェの戸締まりをしてヘレンへ鍵を返したあと、アルは誘われるがままに、レオナルドの自宅へと足を踏み入れていた。 「コーヒーが美味しいと言うから行ったけど、飲み損ねちゃったな。……アルくんは、コーヒー飲める? アイスティーの方がいいかな?」 「……あ、じゃあアイスティーで」 (アルくん……?? レオ、僕のことそんなふうに呼んでなかったよね? 間違えちゃったのかな?)  さっきは嬉しさのあまりに興奮して周りが見えなくなっていたけど、何か引っかかるところはあった。  でも久しぶりだし、アルは転生して猫獣人という姿での再会だ。話が合わないことがあっても不思議ではないかもしれない。  さらに湧き出てきた違和感に気付かないふりをして、念願叶っての再会を喜ぶことにした。 「レオは、いつ頃こっちの世界に来たの? 神様に会えた? 僕ね、挨拶をしようとしたのに会えなくて……」 「ごめんね、実はこっちに来たときのことは良く覚えていなくて。……記憶が混濁しちゃってるのかな」  アルが次々と質問するのに対して、レオナルドは申し訳無さそうに答えた。 「これから話していくうちに思い出せるかもしれない。色々と教えてね。……はい、アイスティー。チーズケーキもあるから持ってくるね」  そう言いながら、キッチンの方に消えていった。  アルは少し寂しさを感じつつも、転生なんてすごい体験をしたのなら仕方がないか……。そう思いながら、出されたアイスティーを一気に飲み干した。

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