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買い物デート ④
「随分楽しそうだな」
「うん。すっげー楽しい! そうだ! どうせだから、イメチェンしようぜ! 俺がやってやるよ」
「あっ、お、おいっ!」
俺は、戸惑う露木君の手を引いて、近くのフードコートに連れて行った。
食事時を過ぎたフードコートは閑散としていて、客はまばらだ。俺は、空いている席の一つに露木君を座らせて、その正面に陣取った。
「お前、本当に人の話聞かないよな。……ったく」
「へへ。いいじゃん、たまには。あ、俺買って来るけど何飲む? 露木君、何好き?」
「コーヒー」
「了解!」
俺は、注文した飲み物を持って露木君の元へ戻ると、早速その髪に手を伸ばした。
「うわっ、露木君の髪ってサラッサラだな。すっげー触り心地いい」
「そ、そうか?」
「うん。俺の髪、細くてコシが無いからさ。スタイリング剤もあんま効かなくって。いっつもナチュラルに伸ばしっぱなしなんだよね」
露木君の髪にさっき買ったばかりのワックスを軽く馴染ませながら、毛先に指を絡める。
「僕は椎名の髪、柔らかくて綺麗だし、好きだけどな」
「あ、ありがと……」
自分の髪、猫っ毛であまり好きじゃなかったのに、露木君に褒められると、凄く擽ったい気持ちになる。
柔らかくて細いこの髪は、日に当たるとキラキラ茶色に透けて、女子からはよく綺麗だと羨ましがられたりする。男が髪なんて褒められたってちっとも嬉しくない筈なのに、露木君に好きだとか言われるのはなんだか妙に照れくさい。
俺はそれを誤魔化すように、露木君の髪を丁寧にセットしていった。
服に合わせて、いつもは野暮ったく降ろしてある前髪をワックスで軽く後ろに流して、冷たいフレームが光る眼鏡を外したら、露木君の雰囲気が一変する。
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