29 / 226
買い物デート ⑤
「やばっ、すっげー……格好いい」
そこに現れたのはやっぱりNaoだ。
元々長身でスタイルが良いし顔立ちも整っている方だから、マスクと眼鏡を外して、ちょっと髪を整えたら学校でもすぐに女子達が騒ぎ出しそうなレベルだ。
「ん? 何か言ったか?」
「あ、いや。何でもないんだ。ウン。自分の腕前に惚れ惚れしてただけ」
「なんだそれ」
露木君はそう言って呆れたように笑ったけど、その笑顔が眩しくて俺は思わず目を細めた。
髪型と眼鏡だけでこんなにも変わるんだ。
今まで見慣れてた「ただの地味なクラスメート」が、今は凄く格好良く見える。
眼福過ぎて、心臓が保ちそうにない。
「やっぱ、眼鏡は掛けとこうか」
イケメンオーラが過ぎるよ露木君っ! 心臓に悪すぎるし、さっきから周囲の女子達の熱い視線が露木君に注がれているのがわかって、居た堪れない。
「なんでだよ。外せって言ったのは椎名だろ?」
「あーうん。ソウデスネ」
それはそう! そう、なんだけど……! 推しが近くに居るって意識しちゃって落ち着かないんだよ!
そう言えればいいのに。
でも、それじゃあ俺がNaoの大ファンだって白状する様なもんだから、本人には絶対言えない!
「なんだよ、その歯切れの悪い返事は。そんなに変なのか? コレ」
「ぜっ、全然変じゃないし! めちゃくちゃ似合ってるよ?」
「嘘つけ。お前、目が泳いでるじゃないか」
露木君は訝しげに眉間に皺を寄せて俺を見る。どうしよう、なんて言ったらいい?なんて脳内でグルグル考えていると、不意に肩を誰かにポンと叩かれた気がして、振り返る。
「やっぱ環だ。こんなトコで会うなんて奇遇じゃね?」
「へ? ……っ!?」
耳に響く、人を小馬鹿にしたような、ちょっとチャラそうな声。
一瞬、誰だかわからなくてぽかんとしたけれど、声の主の顔を認識した瞬間自分の頬が引き攣るのがわかった。
だって、そこに居たのは――。
ともだちにシェアしよう!