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買い物デート ⑧
「床に這いつくばってる姿を可愛い彼女に見られる気分はどう? まぁ、たいして可愛くもないし、性格の悪さが顔から滲み出てるけど」
「なっ!」
紗季の顔がみるみるうちに怒りで真っ赤に染まっていく。
「見る目がないね」
露木君は、吐き捨てるようにそう言って、冷ややかな視線そのままに二人を見比べ鼻で笑う。
俺でもわかるくらいの明らかな安っぽい挑発。
それなのに、頭に血が上っているのか篠田の顔がみるみるうちに歪んでいくのがわかった。
今にも噛みつきそうな勢いで、床に抑えつけられたままジタバタするけれど、露木君の力が強すぎるのか篠田の体はびくともしない。
「お前、マジで殺すぞ!」
「それはこっちのセリフだ」
「っ!?」
あ。これ、マジギレのやつだ。
「椎名を傷付けた事。僕は絶対に許さない」
露木君の、絶対零度の怒りに満ちた声に俺の背筋が凍り付く。
「つ、露木君! もういいって! これ以上騒ぎになったら困るよ」
「……っ、悪い」
俺の声に露木君は、ハッと我に返ったように、組み敷いた篠田の体から手を放した。
篠田は、屈辱的な表情で顔を歪めると、俺達を睨みつけながら立ち上がり、「覚えてろよ!」なんて、ド定番の台詞を吐き捨てて紗季と共に走り去って行った。
周囲の客達が驚いたように俺達を見るけれど、俺はそれを気にしている場合じゃない。
「露木君。ごめんっ! 俺のせいで巻き込んじゃって」
俺があんなのに絡まれて無ければ、こんな事にはならなかったはずだ。
「椎名のせいじゃない。僕が勝手にやった事だから。それに――」
露木君は、俺の頭にポンと手をのせる。
「守ってやるって約束しただろ?」
「っ!」
ふわりと笑われて、ドキンと心臓が大きく跳ねた。あれって、やっぱり夢じゃなかったんだ……。
こんなの不謹慎かもしれないけど、俺は凄く嬉しかった。
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