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買い物デート 11
田んぼの畦道を抜け、辿り着いたのは「工藤バラ園」と言う看板を掲げた、とても立派なローズガーデンだった。
「これ? ここに寄りたかったの?」
「そう。もしかして椎名はバラ、嫌いだった?」
自転車を駐輪場に停めて、自販機で買ったペットボトルのお茶で喉を潤した露木君が、俺を振り返る。
「バラは嫌いじゃない。昔、母さんが育ててたから」
「そっか。よかった」
露木君はそう言って少し安心したように表情を緩めた。
さっき、あんな事を言われそうになったせいで、その笑顔にはいつもの数百倍の威力が備わっているように感じて、俺は直視できずに思わず視線を逸らした。
だって、あんな事があったばかりだし。否が応でも意識しちゃうって言うか……。
「ここさ、一日中無料で開放してくれてるんだ。家族で経営しているところなんだけど、凄く手入れが行き届いてて、良いところだよ」
「へぇ……」
色とりどりのバラの花が、まだ少しだけ冷たい春の風に揺れていて、等間隔に置かれた外灯に照らされている様子は、まるで一枚の絵画みたいだ。
「中に工房があって、そこで苗が買えたり、ブリザードフラワーとか手作りのローズジャムとかも売ってるんだけど、見る?」
「うん」
この感じの露木君は凄くレアだ。本当にバラが好きなんだろうなって言うのが伝わって来る。また一つ、俺の知らない彼の一面を垣間見れて、なんだか凄くくすぐったい。
露木君に連れられるまま奥の方へと歩みを進めていく小さな工房みたいな建物が建っているのが見えた。
そこに「B.Rose」と書かれた看板が掛けられている。中に入ると、フワンと漂って来る甘い香り。
綺麗にラッピングされたプリザーブドフラワーは色鮮やかで、物凄く綺麗だ。
特に青いバラが目を引く。コレを作った人は凄くセンスがいいんだろう。
加工の事とか、配色がどうとか全然わからない俺でも、家に一個飾りたい! って思うくらい出来がいい。
工房内を見渡せば、他にもジャムや紅茶、石鹸、ポプリなども販売されていて、露木君が言ったように苗もたくさん並んでいた。
きちんとディスプレイされた商品の数々は、見ているだけでも、ワクワクして購買意欲がそそられる。
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