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買い物デート 12
「へぇ、バラのジャムかぁ」
赤に黄色、オレンジにピンク。瓶の中の小さな花束は、どれもとても綺麗で目移りしてしまう。
「いらっしゃいませー。って、あら? 直人君じゃないの。久しぶり」
「こんにちは、莉々子さん」
工房の奥から溌溂とした声がして、小柄でスラッとした体形の綺麗な女の人がひょっこりと顔を出した。20代位と思われるのその人は、露木君の知り合いなのか、親しそうに話し掛けて来る。
って言うか待って! 露木君の名前って直人だったの!? それってもう、Nao確定案件じゃん!
学校ではいつも苗字でしか呼んだことなかったから全然気づかなかった!
俺が全然違う所に衝撃を受けている間にも、 二人は親し気に話をしながら、二言三言会話を交わして仲良さげに笑い合っている。
「今日は、お買い物?」
「そうなんです。ノヴァーリスの苗を探してて……。去年ここで買った苗はちょっと事情があってダメになってしまったので」
「そうなの? 相変わらず青いバラにこだわりがあるのね。何もノヴァーリスに拘らなくても、他の品種も綺麗なのに」
「僕、あのバラが好きなんです。特別なんですよ」
「ふふふ。知ってる。思い出のバラなんでしょ?」
そんな二人の会話が、耳に入って来る。
そんなめちゃくちゃプライベートな話、俺、聞いちゃってよかったのだろうか?
思い出のバラって、なに? もしかして、歴代の彼女から貰った物とか?
そう言えば昼間拾った鉢には何か植わっていたであろう痕跡があった。
多分それが、その青いバラだったんだろう。
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