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買い物デート 13

ここに居ると、俺の知らない彼が沢山出て来る。 それが楽しくて、嬉しくて、でも何故か苦しい。 「で? そこの可愛いお兄さんは、直人君のなんなの?」 「へっ!?」 俺が一人で考え込んでいると、莉々子さんが突然俺に話題を振って来た。 「なに、って俺は」 「あぁ、彼は僕のクラスメイトで、一番大事な友達ですよ」 俺が答えるよりも先に、グイッと肩を引かれて、露木君の腕の中に抱き竦められる。 「ちょ! 露木君!?」 「あれ? 違った?」 「ち、違わない! いや、違わなくないけど、一番大事な友達って!?」 なんで俺はすっぽりと彼の腕の中なんだ! って、てか、一番ってなに!? ついこの間まで話したことも無かったのに! 内心パニックになりながら、露木君を見上げると、ちょっと意地悪そうな笑みが俺を見下ろしていた。 「まぁ、細かい事はいいじゃないか」 いやいや、ぜんっぜん良くないから! Nao=露木君だとわかった今、俺の心臓がバクバクと凄い事になってるから! 「ふふ。可愛いわね。直人君のそんな顔、初めて見た」 莉々子さんは、そんな俺達を見てクスクスと笑う。 今この状況に少しも違和感を感じないんだろうか。この人……! 「直人君が、同年代の男の子のお友達を連れて来るなんて初めてよね? しかもこんなに。よっぽど気に入ってるのね。ふふ、ご馳走様」 莉々子さんはそう言って、意味深に笑った後、「ノヴァーリス、準備するからちょっと待っててね」と言って、奥の方に引っ込んで行ってしまった。 「えっと、露木君。あの……」 「何?」 「その……そろそろ放して貰えると」 「あぁ、ごめん」 俺がもごもごとそう言うと、露木君はようやく俺の体を解放してくれる。 でも、その腕は俺の肩に置かれたままだ。 「僕、育てるのが下手くそなのかよく枯らしちゃうんだよね。その度に此処に買いに来てるんだ。だから莉々子さんには顔、覚えられちゃって て」 露木君はそう言って苦笑いした。 「でもね、此処のジャム、凄く美味しいんだ。だから、今日はどうしても椎名を此処に連れて来たくて」 そう言って、露木君はまた一つ俺の知らない顔を見せる。 俺が見た事ない優しい顔。でも、今のその笑みは少しだけいつもの彼よりも幼く見えて、心臓がキュッと音を立てた。露木君って、こんな顔もするんだ……。

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