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買い物デート 16

「簡単なもので悪いけど」 そう一言添えてから、出てきたものに俺は思わず目を剥く。 炊き立てのご飯とみそ汁。それと、ほうれん草の胡麻和えに、酢の物。そして、肉じゃが。 「これ、露木君が作ったの?」 「他に誰がいるのさ」 「いや、そうだけど」 テーブルの上に所狭しと並べられた料理の数々。肉じゃがからほわんと立ち上って香る、食欲をそそるいい匂い。料理を作らない俺だって、これがけっして簡単に出来るものじゃない事位わかる。 「露木君凄くない? どれもこれも美味しそう!」 俺は、手を合わせると早速肉じゃがに箸を伸ばす。一口頬張ると、出汁の旨味と、ジャガイモのホコホコした食感が口いっぱいに広がる。 「やば、なにこれ。めっちゃ旨い!」 どれもこれも美味しくて、箸が止まらない。疲れてるし、俺はファミレスかコンビニでいいんじゃないかって、提案したんだけど、露木君が断固として家で食べようと譲らなかった。 しかも、昨日自分で買って来た食材たちと、元々冷蔵庫に入っていたものを確認してからの手際の良さ。 これはもう、一日や二日で身に着くスキルじゃない。普段から料理している人のそれだ。 「……あまり、美味い、美味いって言わなくていい」 「へ? なんで?」 俺は、肉じゃがを頬張りながら不思議そうに露木君を見上げる。 「なんでって……料亭で出てくるような味じゃ全然ないし、盛り付けだって適当なのに。家庭料理レベルの味付けを褒められたら、なんか恥ずかしいって言うか」 そう言って、露木君は唇を尖らせた。

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