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新たな日常 ⑥

「――はぁ」 薄暗い家の玄関に入り、俺は大きくため息をついて肩を落とした。 朝はあんなに近くに存在を感じてドキドキしてたのに、学校に近づくにつれてその距離はどんどん離れて行った。 まぁ、冷静になれる時間が必要だったのは確かだし、今まで接点が無かった俺と露木君が一緒に仲良く登校してる所をクラスの誰かに見られたら、ちょっとした騒ぎになるからって言う露木君の言い分もなんとなく理解できる。 でも、別にクラスメイトなんだしさ、偶然を装えば全然良くないか?  四六時中一緒に居たいとか、そんなんじゃない。 だけど、何もフル無視する事ないじゃないか。 昼間の学校での彼の態度を思い出し、俺はまた大きくため息を吐く。 元々、彼は俺に対して塩対応だったし、クラスでも壁を作ってた。それを思えば、普通の事なのかもしれないけど。 「なんか……複雑」 思わず独り言ちて、リビングに向かうとソファにドサリと身を沈めた。 ギャップあり過ぎてどっちが本当の彼なのか、わからなくなってくる。学校にいるときの露木君は、よそ行き用の顔なんだろうか。 それとも。Naoの方が?  そう言えば今日は遅くなるって言ってたけど、何処でなにをしているんだろう? もしかして実は彼女がいて、今日はデートだったり? 学校に居る時の彼だけを見たら女の子の存在なんてあり得ないって思うけど、Naoだったら可能性は0じゃない。だってあんなに格好良くて優しいんだもん。 美人で可愛い女の子とお付き合いとかしててもおかしくは無いわけで……。 女子と二人で笑い合ってる露木君を想像し、俺は思わず自分の膝を抱え込んで丸まった。 「あーもう! なんでこんなにもやもやするんだろ!」 俺は抱え込んだ膝に顔を埋めて、行き場のないモヤモヤに悶々とする。 露木君が他の誰かと一緒に居るかもって考えただけで、なんだか凄く嫌な気持ちになる。なんでこんな気持ちになるのか、上手く説明できないけど、とにかく嫌なものは嫌だ。 「……早く、帰って来ないかな……」 独り言ちた言葉が、誰もいない部屋に響いて小さく消える。なんだかそれが余計に切なくなって、俺は抱え込んだ膝に更にぎゅうっと力を込めた。

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