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キミが好き ②
「僕だって出来る事ならそうしたかった。でも、駄目なんだ……」
「なん、で?」
「だって、僕は君の事……好きになってしまったから」
「っ」
真っ直ぐに俺の目を見つめてハッキリとそう言葉にした露木君に、ドクンと心臓が大きな音を立てる。
覚悟はしていたつもりだったけど、いざ目の前で言われると、やっぱり動揺してしまう。
「ごめん。気持ち悪いよな……。本当は伝えるつもりなんてなかったんだ。キミの側に居られるだけで充分だって思い込みたかった。でも、最近の椎名の態度があまりにつれなくて……。もしかして嫌われたのかなって思ったら、辛くてさ」
俺の反応を見て、露木君は目を伏せると自嘲じみた笑みを浮かべる。
「露木君……」
「だから、もうここには居られない。これ以上キミに嫌な思いをさせたくないから」
そう言って、露木君は俺に背を向けた。
「……待って!」
咄嗟に、俺は露木君の腕を掴んでいた。でも、その後どうしたらいいかわからなくて、俺はそのまま黙り込んでしまう。
「椎名?」
「あ……えっと……。あの、そのっ」
どうしよう、なんて言えばいいんだろう。でも、ここで出ていくことを了承してしまったら、きっともう今までどうり笑いかけてはくれなくなる。
それは嫌だ。
「俺は別に一緒に居るのが嫌だとか、そんなのじゃないんだ」
「うん」
「お、俺、最近変で。その、露木君の事考えると胸が苦しくなったりして……。でも、なんでかわかんないけど、それが嫌とかじゃ無くて……。でも、この気持ちがなんなのかもわかんなくて……っ」
「椎名……。それって……」
俺の言葉に、露木君の瞳が微かに揺れる。それと同時に突然俺の身体がふわっと浮いた。そして、そのまま露木君の腕の中へ抱き込まれる。
「え? ちょっ」
「それって、僕の事を好きって事じゃないの?」
「す……き?」
好きって、なんだ? 確かに、露木君に対して感じるその感情は、友達とか家族に対しての感情とは違ってた感じはしてたけど。
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