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キミが好き ④

「これから椎名が僕と同じ気持ちになってくれるように、全力で口説くから。覚悟してて」 そう言って、俺を抱く腕の力を緩めると、露木君は俺の顔を覗き込み、悪戯っぽく笑った。その笑顔に、俺の心臓は再び大きな音を立てて跳ね上がる。 「っ」 そんな、そんな笑顔でそんな事言われたら……。 「この間みたいに逃げないでよね」 露木君は小さく笑いながらそう言って、俺の額に口付けた。そして、少し名残惜しそうにしながらも、その手を解く。 「じゃぁ、僕はお風呂に行って来るから。あ、一緒に入る?」 「へっ!? や、む、無理っ!!」 ぎょっとして思わず飛びすさる。露木君はそんな俺の様子を面白そうに眺めていて、あぁ、からかわれたんだなと気付いた。 「冗談だよ。じゃぁ、行ってくるね」 「お、おぅ……」 そう言って、露木君はひらひらと手を振って着替えを取りに自分の部屋へと戻って行く。 静かにドアが閉まるのを確認し、俺はへなへなとその場にしゃがみ込んだ。 露木君って、露木君って……ッ。 推しが全力で俺を口説きにかかるって、どんなパワーワードだ。 「俺、ヤバくない?」 こんな調子で、俺は大丈夫なんだろうか? 何処かで煙噴いてぶっ倒れたりしててもおかしく無いと思うんだけど。 「はぁ……っ」 大きくため息を吐いて、俺は両手で顔を覆う。 露木君の事は好きだし、一緒に居て楽しい。 それは、間違いない。 でも、それが恋愛的な意味なのかって言われると……。正直、わからない。 「俺、これからどうなっちゃうんだろう……」 誰に問うでも無くそう呟く。その問いは答えられる事無く、俺の心の中に静かに沈んでいった。

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