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キミが好き ⑤
太陽が眩しい。
結局、昨夜はドキドキして中々寝付けなかった。寝不足でぼんやりした頭で布団から這い出しリビングへと続く扉を開く。
「あ、おはよう椎名」
「っ!」
いつもなら、この時間帯はまだ布団の中にいる筈の露木君が、霧吹き片手に爽やかな笑顔を向けて来た。その予想外の光景に俺は驚き、思わずびくりと肩を震わせてしまう。
「なに? そんなお化けでも見たような顔して」
露木君はクスクスと笑いながら俺を見る。
「……だって、まだ寝てると思ってたから」
昨日の今日で、どんな顔をすればいいのかわからなくて、俺は視線を宙に彷徨わせた。
「昨夜はなんだか興奮しちゃってて、中々寝付けなくて。せっかくだし、もう少ししたら椎名を起こしに行こうかと思ってたのに残念だな」
心底残念そうな表情でそんな事を言われ、俺は思わず返答に困ってしまう。そんな俺を余所に、露木君は霧吹きをダイニングテーブルの上に置いた。
「そんな事よりさ、椎名見て。蕾が出来てるんだ」
「え!?」
そう言っておいでと手招きされて、俺は慌てて彼の傍へ駆け寄った。
俺の目の前に差し出された植木鉢の中では、小さな苗がすくすくと育っている。
「あ、本当だ。いつの間に……」
昨日はまだ、葉っぱだけだった。それが、たった一晩で小さな蕾を付けてる。
よく見てみたら、一つだけじゃなくて、蕾になりそうな物も含めたら三つも花芽が付いていた。
まだ、本当に小さな膨らみだけど、日々こいつ等も成長してるんだって実感する。
「いつ咲くんだろう? 明日かな?」
「ははっ、流石にそんなに直ぐには咲かないよ」
花芽を確認しながら目を輝かせる俺に、露木君はそう言って笑った。
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