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キミが好き ⑦

「ほんっと、見てて面白いよね椎名って」 それは、褒めているのか、ディスっているのか。多分、後者だと思う。 「う……煩いな」 俺はムッとして、露木君から視線を逸らす。 「ごめんごめん、怒らないでよ。可愛いなぁって思っただけ」 「その可愛いって、やめてくんない? 男に可愛いって言われたって嬉しくないし」 「そう?」 露木君は、相変わらず俺の頬を摘んだまま、小さく首を傾げた。そして、そのまま摘んだ頬を軽く引っ張ってくる。 「っ、なにふるんだ」 「だって、椎名のほっぺた柔らかいから」 「はなひてよ」 「やだ」 やだって! 子供か!! ツッコミを入れようと顎を上げたそのタイミングで、露木君の顔が近付いて来る。 「え……?」 咄嗟の事で身動きが取れなくなった俺の唇に不意打ちみたいなキスが降ってきた。 ――あ、露木君って、意外と睫毛が長い。 じゃ、なくって!! 「ン……ッ」 小さな音を立てて、露木君の唇が俺のそれに触れた。そして、直ぐに離れて行く。 「隙だらけだよ。椎名」 イタズラっぽく唇の端を上げて露木君が笑う。俺は突然の事に頭が付いて行かず、呆然として固まってしまう。 「なっ……おまっ」 「……ごめん。あまりにも可愛かったから我慢できなくって奪っちゃった」 「う、うば……っ」 シレっと涼しい顔でそんな事を言われて、言葉が出ない。 急にこんな事されて、怒ってもいい筈なのに、俺はなんで硬直して、ドキドキして……指先まで震えてるんだろう? 心臓が激しくなりすぎて胸が苦しい。膝が崩れてしまいそうだ。

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