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近付く距離感 ③

「はは、怒られたね」 「誰のせいだと……」 「僕、かな?」 そう言って憎たらしいほどの爽やかさで笑った露木君を俺は軽く睨んだ。 そうだ。元はと言えば露木くんが朝っぱらからあんな事するから……。 あんな――……っ。 あんな事、の内容がフラッシュバックして来そうになり、俺は慌てて頭を振った。 ダメだ、思い出すな。今は授業中だぞ!?  落ち着け。今はとにかく授業に集中しないと。俺は大きく深呼吸をすると、黒板に視線を向けた。 だけど、どう頑張ってみても集中力が長続きしない。 元々古典が苦手な分類に入っているせいも勿論あるとは思う。でも、絶対それだけじゃない。 露木くんにとってはキスなんて大した事ない事だったり……するのかな。 そう言えば、Naoの配信の中にちょっとえっちぃシチュボもあるし……。 俺が思ってる以上に露木くんは、もしかしたらそういうのに慣れているのかもしれない。 俺の知らないオトナな関係とか経験が、沢山あったりして……。 なんて、勝手に想像を巡らせてモヤモヤとしてしまう。 ふと、視界の端で何かが揺らいだ気がして、視線をそちらへ向ける。すると、クックックっと小さく肩を震わせて笑う露木君がいた。 「~~ッ!」 俺、まさかずっと露木君に観察されてた!?  そんなの恥ずかしすぎるし、居た堪れない。 慌てて俯いたそのタイミングで、今度は尻のポケットに入れていたスマホが振動し始めた。 一体誰だよ!? 授業中なのに! もしかして、父さんか? いけないと思いつつもスマホをそっと取り出して、机の下でロックを開く。チラッと画面に目をやった俺は、思わず固まってしまった。 だって、そこには 『なに一人で百面相してるの?』 画面に浮かんだ短いメッセージにドキッと心臓が跳ねる。バッと、顔を上げて隣を見れば露木君が悪戯っぽい笑みを浮かべてこっちを見てる。

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