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近付く距離感 ⑥
「露木ってさ、椎名のことすげぇ気に入ってるよな」
「ぶふ、ゲホッ、ゲホッ」
昼休み、コンビニで調達した弁当を食べていると、突然クラスメートの藤丸賢人がお母さんお手製だという大きな唐揚げを頬張りながら妙な事を言いだした。
「な、なに? 突然」
「なに動揺してるんだよ。ウケるし」
そりゃ動揺もするだろう。だって、俺も露木くんも学校では極力普段どうりに振る舞ってるつもりだったし。
賢人とは中学からの知り合いで、親友とまではいかないが、時々一緒に昼ご飯を食べる程度には仲がいい友人の一人だ。高校に入って急にお洒落に目覚め、暇さえあれば髪を弄っている。
そんなイマドキ男子に変貌した彼は、男の俺から見てもそこそこカッコイイ部類に入るとは思う。
最近ちょくちょく昼ご飯を一緒に食べようと誘ってくれるのは、篠田と話さなくなってボッチ飯の俺が可哀そうに見えたからだと、勝手にそう解釈している。
まさか賢人にそんな事言われるなんて思ってもいなかった。
「面白くないって。……だって、そんなこといきなり言われたら誰だってびっくりするじゃん」
「いきなりじゃねぇよ? 前々から思ってたんだよ。露木のお前に対する態度ってみんなとは違うなぁって。 お前、一体なにやったんだよ」
「なにって、別に俺はなにも……」
そうなんだろうか? 別に特別扱いされた記憶はないし、むしろ最近までめちゃくちゃ嫌われてるんだと思ってたんだけど。
なにか変わったことがあるとするなら、ルームシェア始めたり、好きだって告白されたりしたくらいで……。でも、そんな事言えるわけがない。
そもそも、それだってここ一週間くらいの間にあった出来事だ。
賢人がいうような前々からって事はないだろう。多分。
「なんでそう思うんだ?」
とりあえず誤魔化すために、それとなく話を聞いてみる。
すると、賢人はポリポリと頬を掻いて、キョロキョロとあたりを見渡して内緒話をするみたいに顔を近づけてくる。
「うーん、なんでって言われても。なんつーか、椎名を見てるときの目がさ、違うんだよね」
「目?」
「すっげぇ優しいっつーか、愛おしそうっつーか、そんな感じの。しかも今日、アイツ超機嫌いいじゃん。あれって多分、椎名の隣の席になったからじゃないかって思うんだよ」
愛おしい? 俺に対して? 前々から、そんな目で見てた?
にわかには信じられなかった。だけど確かに、露木くんにも「前から好きだった」的なことを言われたばかりで、全然間違っているとも言えない。
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