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ヤバい ⑤

それからの事は、変に意識し過ぎてあまり良く覚えていない。 何故かやたらと賢人の事を聞かれたような気もするけど、それもあまり記憶には残っていない。 家に戻って、一緒にキッチンに立って料理を作って、超美味しい唐揚げを食べ、デザートと称して甘いイチゴをあーんして貰って……。 食後、促されるままにシャワーを浴びて、そして……。 「…………」 どうしよう。風呂から出たらやっぱりさっきの続き、するんだろうか? そもそも、男同士で続きって、どうやってするんだ? ちゃぽんと湯が跳ねて、水面がゆらりと揺れる。 露木君は、俺の事を好きだと言ってくれた。でも、俺はまだその答えを出せていない。恋愛とか、良くわからない。でも、露木君とキスをするのは嫌じゃない。むしろ、気持ちいいし、なんだか身体の奥からムズムズするような不思議な感じがして凄くドキドキする。 多分だけど、露木君は俺が嫌がることは絶対にしない。一緒に過ごすようになってまだ日は浅いけど、それだけは断言できる。 俺がこのまま何も考えずにいたら、きっとずっとこの曖昧な状態が続くんだろう。そんな気がする。 だからちゃんと考えなきゃって思うけど……俺、誰かとまともに付き合った事なんてないし……っ。 紗季とは付き合っていたのかも正直怪しい。 お風呂から上がって、露木君にそう望まれたらどうしよう。……どんなこと、するんだろう? だって! もしかしてって思うじゃないか。 お店であんな事して……。その先を想像しないわけがない。 考えれば考えるほど無限ループに陥って、想像力の限界に挑んで疲れ果てて、俺はもう考えるのを止めた。

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