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ヤバい ⑪

「あ……ッ、んん……ッ!」 我慢できずに、そのまま露木君の口内に熱を放った。ビクビクと震える腰を、露木君がしっかりと抱え込む。 「は……っ、あ……あ……ッ」 全部吐き出すように唇で扱かれて、その快感にまた軽い絶頂を迎えた。 ごくんと、飲み込む音が俺の荒い息遣いの合間に聞こえ、くったりと脱力した身体をソファに投げ出す。 「いっぱい出たね」 露木君の揶揄する言葉に、蕩けた頭の片隅で憤死しそうになるけど、もう何も言い返せない。 「じゃぁ、僕はお風呂に行って来るよ」 「えっ?」 何事もなかったかのようにさらりと言われ、驚いて思わず身体を半分起こした。 「えっ、ってなに? もしかして、最後までシたかった?」 「やっ、ち、ちがっ……そ、そう言う……わけじゃないけど……」 露木君の言葉に、俺は慌てて視線を逸らして口ごもる。だって、最後まで、って……。 露木君の言う「最後まで」が何を意味するのか、いくら経験の乏しい俺でも流石にわかる。 「大丈夫。無理やりなんてことはしないから。椎名に嫌われたくないしね」 「――ッ」 露木君は、困ったような笑みを見せた。咄嗟に俺は何も言えなかった。 あのままうっかり流されて、関係を持つことだって出来たはずだ。 だけど露木君は、それをしなかった。あくまでも俺に選ばせようとしてくれている。 俺にはまだ、迷いや戸惑いだってある。そう言う俺の覚悟しきれていない状態を露木君は見抜いていたんだ。 「でも、椎名がその気になってくれるなら、いつでも大歓迎だよ」 なんて、爽やかな口調とは裏腹に目の奥ではギラギラとした欲が光っているのを俺は見逃さなかった。 「……ッ」 露木君って……、本当にズルイと思う。 そんな目で見つめられて、そんな言葉を聞かされたら、嫌でも意識してしまうじゃないか。 正直俺は、まだ自分の気持ちがよくわからない。 露木君の事は好きだけどそれは、恋愛的な意味かと問われれば、まだはっきりとした答えは出ないままだ。 だけど、このまま自分の気持ちを曖昧にしたまま流されて、なし崩し的に関係を持ってしまったらお互いに後悔するする事になる。 だからこそ俺は、自分がどうしたいのか、露木君とどういう関係になりたいのかをちゃんと考えないといけないんだと思う。

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